大学を卒業して就職し、がむしゃらに働いて20代を過ごした社会人も、30代に入ると転職や結婚、住宅購入など、人生のさまざまな転機を迎えることになるだろう。そういった意味で、30歳は一つの節目となる年齢といっても過言ではないが、「デキる30代」になるために知っておくべきことは意外と少なくない。
そこで本特集では、ファイナンシャルプランナーの佐藤章子氏に、30代を迎えるまでに最低限知っておきたいテーマの基本を解説してもらう。6回目となる今回のテーマは「老後資金」だ。
「老後」と考えると、「自分たちは年金がもらえない! 少ない!」とマイナス面ばかり思い浮かびませんか? 国は頼れないので自分で老後の資金を準備するという声もよく聞きます。
しかし、どう準備するのでしょうか。年金制度の破綻は、国の破綻と同じことです。間違いなく、その前に自分で準備している民間の金融機関や制度が破綻するでしょう。国がだめになって民間の金融機関が大丈夫ということはまずないでしょう。
「定番の年金を中心に今から普通に準備すれば、何も心配することがない」というのが私の考え方です。確かに少子化だから年金が少なくなるかもしれません。支える人口が少なくなるので当然です。
しかし全体を大きく見渡せば、少子化ということは、子どもへの投資は少なくなるはずです。子どもを増やすか、子どもに投資する分を自分たちの老後に回せばよいだけです。子どもがいたとしても、欧米のように自立して大学に行くような子どもに育てる時代になるべきなのではないかと思います。
昔と違うのは、今があまりにモノが溢れすぎていて、消費生活が膨らみすぎている点です。「子どもを増やす」「生活を絞って資産を増やす」「子どもを自力で大学に行けるように教育する」など、見通しを定めることが大切です。先々が不安と言いつつ、何もかも享受しようとするのは無理があります。
人生3分割で考えよう
成人する以前は別として、社会人以降の生活を3つに分けて考えてみましょう。下図はそのイメージです。60歳まではとにかく一生懸命働き、住宅ローンを完済し子ども関連の費用を用意完了します。注目すべきは、60歳までに準備する老後の資金は、75歳以降の分で十分だということです。
今は65歳まで働けます。用意周到に準備すれば、負担なく75歳まで働けると思います。ただし、60歳の収入と75歳の収入は同じではないでしょう。重要なポイントは、この期間は60歳までに蓄財した資産を温存するということです。同時に、シンプルライフに向けて不用品の整理など、新しい人生のために環境を整えていきましょう。
Facebookなどで昔の仲間などを見ていると、60歳で次々定年に差しかかっていっています。みな仕事は続けていますが、猛烈に自由を謳歌しています。特に男性は大いに人生を楽しんでいる傾向に見えます。体力気力も十分で仕事にも慣れているので、まだまだ目いっぱいいろいろできる年齢なのです。
収入が多ければ、年金などを繰り下げて75歳以降の生活費を増やす工夫をしたり、趣味に没頭したりするのもいいでしょう。働きたくなければ年金の中で生活する工夫をすればよく、自由にさじ加減できる調整期間でもあります。
いよいよ75歳になると、さすがに仕事も負担になるでしょう。これからは、今までに蓄えた費用を消費する時代です。75歳までに自由を満喫すれば、心残りも多少なりとも少なくなるかもしれません。「シンプルな暮らしにどのくらい費用がいるのか」「介護費用はどのくらい用意すればいいのか」「老後はどこで誰と暮らしたいか」など、自身に照らし合わせた必要費用を計算していきます。