アスリートでありアーティスト。息の合った華麗な舞で美を競う
手具を使いながら音楽に合わせてリズミカルな演技を行い、芸術性を競う「新体操」。身体と手具が一体化するような、しなやかで洗練された美しい動きと、曲の雰囲気に溶け込むような演技が魅力だ。躍動感あふれるダイナミックな動きの中に、頭からつま先まで全神経を集中させてバランスを保つ繊細さを兼ね備えている。
演技は13メートル四方のフロアマットで行われ、個人競技と団体競技の2つに大きく分けられる。個人は「ロープ(個人はジュニアのみ)・フープ・ボール・クラブ・リボン」の5つのうち、オリンピックではロープ以外の4種目を1人の選手が行う。団体は、1チーム5人の選手によって2種目が行われる。なお演技時間は、個人競技は1種目につき1分15秒~1分30秒、団体競技は各種目2分15秒~2分30秒と決められており、長すぎても短すぎても1秒につき0.05点の減点となる。
1963年に第1回新体操世界選手権大会がハンガリーで開催された後、女子のみのオリンピック正式種目になったことで、多くの国々に新体操が広まった。個人総合はロサンゼルス1984大会から、団体総合はアトランタ1996大会から実施されている。
競技の一番の見どころは、スピード感あふれる巧みな手具さばきだろう。6メートルの長さのリボンを流れるように大きな弧を描くなど自在に操るためには、常に手首を動かしていなければならない。しかも、リボンが床についたり、絡まって結び目ができたりすると減点対象となってしまう。笑顔で華麗に舞いながら、いとも簡単にリボンをクルクル回しているように見えるが、実際は見た目以上に筋力が必要なのだ。
空中に投げてキャッチしたり、身体に巻きつけたりするロープの演技は、持ち方や投げ方のテクニックはもちろん、軽やかなステップやジャンプにも注目したい。フープの演技では、高く投げたフープを身体を通して受け止めるといった高度なテクニックと、ダイナミックな動きが見せ場だ。
ボールの演技では、手具であるボールが小さい分、特に身体や動きの柔軟性が重要となる。腕や背中などで転がすボールが、身体に吸いつくように流れる動きが見どころだ。長さ40〜50センチメートルのクラブの演技では、必ず2本をセットで使う。左手で回しながら右手で投げるなど左右で異なった動きをすることもあり、常に双方を意識しなくてはならず、より集中力が必要とされる分、落下も起こりやすい。
選手はより完璧な演技を目指すが、一瞬のミスによる減点が大きく順位を左右する。リオデジャネイロ2016大会の個人総合では、ハイレベルな頂上対決において、マルガリータ・マムン(ロシア)が金メダルを獲得したが、トップで前半を折り返したチームメイトのヤナ・クドリャフツェワ(ロシア)が演技の最後にクラブを落としたミスが明暗を分けた。
なお団体では、単一の手具、またはクラブ&フープなど2種類の手具を組み合わせて演技を行う。投げによる手具の交換といった、曲芸のように大胆な技を含め、スピーディーかつ息の合った一糸乱れぬ動きに注目だ。
そして、着用する衣装も見どころの一つ。デザインや色づかい、装飾が凝っており、ラメやスパンコールがふんだんに施されてきらびやかに輝く、色鮮やかな衣装でも楽しませてくれる。選手は力強さやスピード、そして柔軟性が求められるアスリートであると同時に、美しさを表現するアーティストでもあるのだ。