東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「体操」にフォーカスする。

回転、跳躍、着地。難易度も完成度も求められるシビアな闘い

器械を用いて身体で演技を行い、技の難度や美しさ、安定性などを基準に審判員が判定し、得点を競う「体操競技」。男子は「ゆか・あん馬・つり輪・跳馬・平行棒・鉄棒」の6種目、女子は「跳馬・段違い平行棒・平均台・ゆか」の4種目が行われ、それぞれの器具の特性を活かした演技で構成される。なお、女子の「ゆか」は音楽に合わせて演技が行われるのが特徴だ。

体操競技の歴史は古く、オリンピックでは第1回のアテネ1896大会から実施されている。当初は男子のみだったが、アムステルダム1928大会からは女子体操競技も行われている。かつては規定演技と自由演技の総合得点で競われていたが、アトランタ1996大会を最後に規定演技は廃止され、現在は自由演技のみで競技されている。

採点方法は長年にわたって10点満点制が採用され、モントリオール1976大会において「白い妖精」と呼ばれたナディア・コマネチ(ルーマニア)が、史上初めて10点満点を出した選手として有名だ。

しかし、選手の得点が極めてわずかな範囲に集まってしまい明確な差がつけられず、些細な誤審でメダルの色が変わる事件が起きたことを発端に、10点満点廃止が議論されるようになった。そして2006年から、技がどれだけ難しいのかを得点化したDスコア(技の内容など演技価値点)と、演技の完成度を得点化したEスコア(演技の美しさや出来栄え点)の合計得点を争う上限のない採点方式となって、現在に至っている。

体操競技の各種目には多くの技があり、それぞれの技や運動の難しさの程度は難度で表され、配点は難度により異なる。どの高難度の技を取り入れるか、様々な難度の技をどう組み合わせて構成し安定した演技をするかに選手の技量やメンタルの強さが試され、得点に反映される。

最大の見どころは、なんといっても体操競技ならではの非日常的なアクロバティックな技や、洗練された美しい動きだ。体操競技は動きそのものが勝敗につながるため、演技時間は短いが、気を抜ける動きは一つもない。その中で、男子はそれぞれ特徴的な動きを示す6種目において力強さと豪快さを、女子は4種目で優雅さと華やかさを楽しめる。

競技は、最初に予選が行われる。団体総合、個人総合、種目別のそれぞれの決勝進出をかけて予選で演技することになるが、各選手、各種目で行った1演技の得点によって予選を通過するかどうかが決められる(ただし、跳馬種目別の権利を得ようとする選手のみ跳馬を予選で2演技行う)。

団体総合は、各国1チーム(東京2020大会では4名)で演技を行い、合計得点でメダル獲得を目指す。個人総合は、すべての種目(男子は6種目、女子は4種目)を1人の選手が演技して、合計得点を競う。種目別では、各種目の得点上位の選手が決勝で激突する。すべて予選の得点は加味されず、決勝での得点により順位が決められる。

また体操競技では、技の名前に、その技を最初に成功させた選手の名前が付くことも特徴だ。国際体操連盟(FIG)の定める国際大会で、過去に実施されたことのない新技を事前に申請したうえで発表し成功すると、その技の通称として実施した選手の名前が会議を経て技名として認定される。ロサンゼルス1984大会で森末慎二が発表した平行棒の「モリスエ」など日本人選手の名が付く技も多い。