問題をおさらい!
正解はこちら!
【答え】ホンダ「ビート」(BEAT)
ホンダの「ビート」と言えば1991年に登場したオープン2シーターの軽自動車が有名ですが、その名称を最初に名乗ったのはこちら原付スクーターです。発売は1983年でした。
原付の方のビートは一目見たら忘れられない強烈なインパクトを与えるデザインですが、ホンダが見掛け倒しのバイクを作るはずはありません。その中身も初物づくし、最新技術が満載で、まさに究極の50ccスポーツ・スクーターと言えるものでした。
まずはエンジンですが、50ccの原付スクーターでは世界で初めて水冷方式を採用した2ストロークエンジンを搭載していました。性能は自主規制値いっぱいの7.2馬力。そのスペックだけでも十分にスゴイのですが、これだけではありません。
一般的に2ストロークエンジンは設計によって性格が異なり、低回転からトルクフルなものは高回転が回らず、逆に高回転のパワーを優先すると低回転トルクが不足します。そこで、排ガスの流路をコントロールして扱いやすさとパワーを両立させる排気デバイスが登場し、125cc以上のバイクに装備され始めましたが、50ccでは変速ミッションを持った水冷スポーツ車であっても、サイズやコストの関係で採用を見送られてきました。
その排気デバイスがビートには装備されていたから驚きです。これは「V-TACS」と呼ばれる機構で、面白いのはライダーが左のステップボード後方のペダルを操作して任意で作動させ、作動時にはタコメーター内のインジケーターが点灯するという凝った演出まで加えられていました。
当時は「加速ペダル」と言われたこの装備に注目が集まりましたが、車体の方も見どころ満載。冷却用インテークを備えたフロントブレーキや、スタビライザーまで付いたフロントフォークは本格的なテレスコピック式で、さらに前後ショックはオイルダンパーという徹底っぷりでした。ほかにも50ccスクーターでは世界初の2灯式ハロゲンヘッドライトや、二輪車で世界初のMF(密閉型)バッテリーを採用するなど“初物づくし”でした。
しかし、あまりにも奇抜な外観や原付としては平均より1.5倍ほど高かった価格などが影響してセールス面では苦戦し、ビートは登場からわずか3年ほどで生産中止になってしまいます。1985年には以後のスクーターで必須装備になる「シート下スペース」(メットイン)のアイデアが登場したり、1986年は原付もヘルメット着用が義務化されて市場が縮小していたことも関係しているでしょう。
大ヒットはしなかったものの、間違いなくビートの性能と装備は超一級品でした。市販の原付スクーターとしてはオーバースペックだったかもしれませんが、負けることを一番嫌うホンダが『ウチが本気を出せばこんなモノが作れるゾ!』という技術力をライバルメーカーやユーザーに見せつけたのは確かです。
それでは、次回をお楽しみに!