問題をおさらい!
正解はこちら!
【答え】ホンダ「NR」
正解はホンダ「NR」でした!
「NR」はホンダが1992年に発売した750ccのオートバイです。エンジン形式は同社が得意とするV型4気筒ですが、バイクに少し詳しい人なら、これが世界で唯一の「楕円(オーバル形状)ピストンエンジン」であることをご存じではないでしょうか。当時の市販車としては非常に高額だった520万円という価格も話題になりました。
「NR」の楕円ピストンが生まれたきっかけは、現在の「MotoGP」の前身にあたる「WGP」(ロードレース世界選手権)にホンダが10年ぶりに復帰した1979年までさかのぼります。当時は軽量でパワフルな2ストロークが主流でしたが、ホンダが選んだのは4ストロークでした。
しかし、当時のレギュレーションは2スト、4ストに関係なく最大で4気筒/500ccだったため、正攻法では圧倒的に4ストが不利。そこでホンダは、エンジン回転数を2ストの倍(約20,000rpm)まで回してパワーを増加させようと考えました。
エンジン回転数を上げるには多気筒・多バルブ化が有効で、これは1966年のWGPで全クラスを制覇したホンダにしてみればお家芸のようなもの。しかし、気筒数が4つまでに制限されているためV型8気筒は使えません。そこで2気筒分をつなげて1つの楕円(オーバル)ピストンとし、32個ものバルブを持つV型4気筒エンジンを搭載した「NR(New Racing)500」が誕生します。
楕円ピストン自体のアイデアはホンダが初めてではなく、1920年代にイギリスなどで考案されていましたが、それらは実験の域を出ていなかったため、ホンダの技術力を持ってしても開発は難航します。試行錯誤を重ねて性能と信頼性が向上していくものの、ライバルの2スト勢も進化しているため追いつくのは難しく、3年目の1982年に2ストの後継機「NS500」にバトンタッチして「NR500」はWGPへの挑戦を終了しました。
しかし、ホンダはその後も実用化に向けて楕円ピストンエンジンの開発を続けていました。WGPでは1983年に「NS500」、1985年には後継機の「NSR500」が500ccのタイトルを獲得しますが、その翌年の1986年、楕円ピストンを750ccに拡大した「NR750」がル・マン24時間ロードレースに登場し、並みいる強豪を相手に予選で2番手を獲得してサーキットを沸かせます。決勝はリタイアとなりますが、これでレース用の楕円ピストンエンジンの開発は終了し、その集大成として6年後に市販されたのが今回の「NR」だったというわけです。
残念ながらWGPでは結果を残すことができなかった「NR500」ですが、V型エンジンの研究開発で得たノウハウは、後にホンダの連勝記録に貢献した「VF/VFR/RVF/RCV」といったレーシングマシンや市販モデルにいかされました。また、ル・マンに登場した「NR750」は事前の24時間耐久テストをクリアしていたほど信頼性が高く、通常のV4よりトルクフルで乗りやすかったと言われています。そのまま開発が続いていたら、ホンダのバイクだけでなくクルマにも転用されていたかもしれませんね?
それでは、次回をお楽しみに!