もっとも心に残っている贈り物

この原稿を書くにあたり「もっとも心に残っている贈り物」について考えました。そして、とある男性のことを思い出しました。私の心にもっとも色濃く残っているのは、彼から受け取った言葉の数々でした。

彼とは、大阪・北新地の某クラブで出会いました。私はまだ25歳で、彼は70代の老紳士でした。去年、友人からの便りで彼が亡くなったことを知り、大変驚きました。病気の後遺症で言葉が不自由な方でしたが、一緒にお食事をさせていただく際は幼少期のこと、家族やお孫さんたちのことなど、ぽつりぽつりとお話してくれました。

メールではとても饒舌な方で、色々なお話をしました。メールを読み返し、一緒に過ごした楽しい時間が蘇るとともに、人生の大先輩から贈られた言葉の数々に再び胸が熱くなっています。

いつかのお正月に彼から受け取ったメールは「私の残り少ない余生に彩りを添えてくれてありがとう」という言葉から始まっていました。

そして「君は人生の花どき。足らざるときは努力で補い、大輪の花を咲かせてください。いつか君が願いを達成するそのときを夢見ています」と、しめられていました。何べん読み返しても心がじんわりとあたたかくなる素敵なメッセージです。

読書が好きだった彼

彼の趣味は読書で、「同じ本でも読む時期によって読了後の感じ方が違うね」とよく言っていました。そんな彼が私にすすめてくれたのは、作家・壺井栄著「二十四の瞳」でした。

物語の舞台は昭和初期から終戦直後の日本。女学校を卒業し、香川県、小豆島の海辺の寒村に赴任した大石先生が主人公です。新米先生・大石は12人の生徒たちとふれあい、成長していきますが、やがて第二次大戦が始まり……。

別れや喪失の悲しみ、そして人と人との絆の尊さを描いた作品です。家族や大切な人が増えた人にとっては、よりグッとくるものがあるかもしれません。読了後の感じ方って、読む時期によって本当にさまざまですよね。

素敵なクリスマスを

今回のテーマは「お金持ちの贈り物事情」でした。中でも特に印象に残っている贈り物と、その贈り主である男性とのエピソードについてお話させていただきました。あたたかい思い出は何度も蘇り、こうして人生の糧になります。

クリスマスに予定のある方も、そうでない方も素敵なクリスマスをお過ごしください。今年1年頑張った自分にご褒美を用意して、たまにはご自身を甘やかしてみるのも良いかもしれません。

皆さんにとって素敵なクリスマスになりますように。