では、なぜミラーレス一眼は個性的なスタイルにでき、一眼レフよりもボディーを小型軽量に設計できるのでしょうか? それは、カメラの機構上の仕組みにあります。

以下の図が参考になります。一眼レフは、レンズを通ってきた光を内部のミラー(クイックリターンミラー)とプリズム(もしくはペンタミラー)を介してファインダーに導く仕組みになっています。シャッターボタンを押して撮影する瞬間このミラーが跳ね上がり、同時にシャッター幕が開くことで、光が撮像素子(イメージセンサー)に導かれる仕組みです。光学的にも機構的にも、これらの部分は現状よりも小さく設計することは不可能に近く、どうしてもある一定以上の大きさが必要になり、さらにある程度決まった形状になるのです。これらの要因が、結果的に一眼レフのスタイルの自由度を制限しているといってよいでしょう。

  • 一眼レフカメラの概念図。レンズが捕らえた光をファインダーに導くためにミラーやペンタプリズム(ペンタミラー)を特定の場所に配置する必要があり、本体サイズやデザインが制約を受けてしまう

  • ミラーレス一眼の概念図。ミラーやプリズムなどの機構が不要なので、本体がコンパクトに設計できる。ファインダーは電子式に表示するEVFなので、配置の自由度も高まる

  • ミラーレス一眼のレンズを取り外したところ。すぐ奥に撮像素子(イメージセンサー)が見えるだけで、複雑な機構は持たない

  • デジタル一眼レフのレンズを取り外したところ。上下に動くミラーがある。見えない部分にも、ファインダーやAFセンサーに光を導くための機構があり、内部はかなり複雑だ

ミラーレス一眼の場合、レンズを通ってきた光は撮影の瞬間だけでなく、常に撮像素子に導かれます。さらに、ファインダーに表示する画像も撮像素子からの電気信号を使用するため、光の通り道を作るためのクイックリターンミラーやプリズムが必要ないのです。光学的にも機構的にもシンプルに設計でき、特にファインダーまわりの設計が柔軟になることから、デザインの自由度が高く個性的なカメラに仕上げられるのです。

ちなみに、クイックリターンミラーが存在しないことが、この機構を採用するカメラがミラーレス一眼と呼ばれるゆえんとなっています。

過去にはカメラらしからぬデザインの機種も存在

ミラーレス一眼は、これまでさまざまなスタイルのカメラが登場しましたが、デザインが自由になることを生かし、一見するとカメラには見えないような異色のモデルも存在しました。なかでも話題となったのが、ソニーの「Cyber-shot DSC-QX1」(2014年10月発売)と、オリンパスの「OLYMPUS AIR」(2015年3月発売)でしょう。いずれも、ボディーが円筒形をしており、手持ちのスマホと組み合わせて使う仕組みになっていました。ただ、本体に液晶を搭載していないなど使い勝手の悪さが嫌われ、残念ながらどちらもヒットには至らず、後継モデルが出ることなく消え去ってしまいました。

  • ソニーが過去に発売したミラーレス一眼「Cyber-shot DSC-QX1」。手持ちのスマホと組み合わせて使う仕組みを採用していた

  • オリンパスのミラーレス一眼「OLYMPUS AIR」。マイクロフォーサーズ規格のレンズが使えるが、一見しただけではカメラには見えない

  • レンズを取り外すとレンズマウントや撮像素子が現れ、ミラーレス一眼だということが分かる

いうまでもなく、カメラは趣味で楽しむものですので、好みに合うデザインやスタイルのカメラを持ち歩きたいものです。お気に入りのカメラであれば常に持ち歩くことも苦にならないはずですし、撮影もより楽しくなること請け合いです。ぜひ、ミラーレス一眼に注目してみてください。

次回は、スマホと比べてミラーレス一眼はどのようなメリットがあるのかを見ていきたいと思います。

  • 小さく軽くおしゃれなミラーレス一眼は、女性にもぴったりだ

著者:大浦タケシ
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。