薬剤師として30年以上のキャリアを誇るフリードリヒ2世さんが、日常のさまざまなシーンでお世話になっている薬に関する正しい知識を伝える連載「薬を飲む知恵・飲まぬ知恵」。今回はEBMと薬の選び方に関するお話です。
EBMは薬の選び方にも応用できる!
薬や治療法の効果を正しく判断する方法として、以前EBM(エビデンスに基づく医療)という手法を紹介しました。現在の医療界で、この方法論が広く使われていることは以前にも述べたとおりです。EBMは、論理的な思考の持ち主ならさまざまな場面に応用でき、薬の選び方にも活用できます。できるだけ平易な言葉を使って、これからEBMの仕組みを説明してみましょう。
以前にも書きましたが、教科書などによるとEBMの手順は以下の通りです。
Step1: 求めたい情報を、答えが出せるような問題に書き直す
Step2: 問題に答えられるような最適のエビデンス(証拠)をうまく探す
Step3: その証拠の妥当性(真実にどれほど近いか)と有用性(臨床応用の可能性)を査定するため、その証拠を厳密に評価する
Step4: エビデンスの評価が出たらそれを臨床の場で実際の患者さんに実行する
Step5: 実行した結果を再評価してStep1に戻る(問題解決まで繰り返す)
何だか面倒くさそうだと思う人もいるかも。筆者が昔EBM関連の勉強会に参加していたときは、Step2と3のことを「エビ固め」と称していました。なんだかプロレスの技にしか聞こえないのですが、もう少し具体的に説明してみましょう。新しい言葉も出てきますが少し我慢してください。
バイアス
まず「バイアス」。日本語で言うと「偏見」「思い込み」「色眼鏡」「かたより」といったところでしょうか。バイアスを持たない人間はほぼ皆無だと思いますが、何かを客観的に評価する(たとえば薬の効き目・効果)とき、それを評価する人がバイアスを持っていたら適正な評価は期待できません。
たとえば、今から薬を飲む人(患者さん)やそれを処方する人(医師)が「この薬は絶対効くはずだ」「効かないはずはない」と思って使うのも、バイアスになります。このバイアスをあらかじめちゃんと取り除いておかないと、プラセボ効果やノーシーボ効果が強く出て、薬の効果を正しく判定できなくなるのです。