当然ながら、薬の量は有効量(域)をキープするのがよいわけですが、医師や薬剤師は子どもの薬用量を具体的にどうやって決めているのでしょうか。実は「Von Harnac(フォン・ハルナック)の換算表」と呼ばれる表を用いて計算していることが多いのです。
Von Harnacの換算表は、体表面積の近似値に基づいて作成されています。体表面積は薬の用量を科学的に決めるときに重視されるデータだからです。この換算表では、成人を「1」としたときの薬の小児用量を以下のように定めています。
未熟児……1/10
新生児……1/8
3カ月……1/6
6カ月……1/5
1歳……1/4
3歳……1/3
7.5歳……1/2
12歳……2/3
医療従事者ではない一般の人にも使いやすそうですね。ただし、未熟児や新生児への適用には慎重を期すようにしてください(一般の人が未熟児や新生児に薬を自分の判断で与える機会はまずないでしょうけど)。なお、出生から満1歳未満までを「乳児」、1歳から小学校入学までを「幼児」ということもあります。
そのほか、プロがよく使う(使っていた)計算式に以下のようなものがあります。ヨーロッパ人の名前が付いたものが多いですね。
Crawford(クロフォード)の式: 小児量=成人量×体表面積÷1.73
Augsberger(アウグスベルガー)の式: 小児量=成人量×(年齢×4+20)÷100
Youngの式(ヤング)の式: 小児量=年齢÷(12+年齢)×成人量
Crawfordの式はヒトの体表面積に基づいているため、かなり正確な適用量を出せるのですが、子どもの体表面積を知らないという人の方が大多数のはずです。ちなみに体表面積は、体重(Kg)の0.425乗×身長(cm)の0.725乗×0.007148で計算できます。
Augsbergerの式は体表面積の近似値を計算で出したもので、薬剤師や小児科医もよく利用しています。Youngの式は無機物の薬にはよいのですが、他の薬には少なくなりすぎるようで現在はほとんど使われていません。
以上の情報は読者の皆さんにも利用していただいてよいのですが、薬剤師や医師に相談して決めるのが安全です。
最後になってしまいましたが、薬の添付文書をよく読むことをお勧めします。文書でもよく見かけますが、大ざっぱに言うと「薬の世界では15歳で一人前(大人)になる」といってよいと思います。ただし、子どもの体は成長途上でM(代謝・分解)→E(排泄)機能が未完成なのです。脳も未完成ですから、脳に作用する薬を子どもに使うのは危険です。
つまるところ、15歳未満の子どもに成人用の薬を単発的に飲ませるのは、できるだけ避けるほうが好ましいということですね。
※写真と本文は関係ありません
筆者プロフィール: フリードリヒ2世
薬剤師。京都薬科大学薬学部生物薬学科卒。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。洋画と海外ミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。