非アトピー型喘息の割合が多く、原因がはっきりしないケースもある大人喘息ですが、喘息自体のリスクファクターはいくつか判明しています。
喘息発症の危険因子としては「個体因子」と「環境因子」があります。気道過敏性を一度獲得すると、アレルゲンだけでなく、運動や冷気、タバコや花火などの煙に対しても気道狭窄が生じやすくなり、咳嗽、喘鳴、呼吸困難などの呼吸器症状が起こりやすくなります。
個体因子としては「遺伝子素因」「アトピー素因」「気道過敏性」「性差」「出生時低体重」「肥満」があります。環境因子には「アレルゲン」「ウイルス性呼吸器疾患」「その他の因子(大気汚染、喫煙、食品・食品添加物、寄生虫感染、薬物など)」があります。
喘息のアレルゲン以外のトリガーとしては「喫煙(受動・能動喫煙)」「大気汚染(屋外・室内汚染物質)」「呼吸器感染」「職業環境における吸入抗原(天然ゴムによるラテックス関連喘息など)」などがあります。また、心理社会的ストレス(心理的状態や家族をはじめとする対人関係のあり方など)が喘息の発症や増悪、治療管理などに影響を与えることは、小児でも成人でも報告されています。
大人喘息の予防は3段階
大人喘息は、小児喘息からの移行や再発もあるため、予防策は小児喘息も含めて考えることが必要です。喘息の予防は「一次予防」「二次予防」「三次予防」に分けられます。
一次予防は、喘息発症の危険が高い人に発症危険因子への曝露を防ぐことです。特に小児では、主としてアレルゲン感作前の出産前後に行われるべき予防です。非アトピー型の多い大人喘息では、発症原因がわからない場合が多いですが、職業性喘息については予防策をとることが可能な場合があります。
二次予防は、アレルゲン曝露により感作された後の、喘息発症前における発症予防です。アレルゲン(チリダニ、ペット、カビ、花粉など)、職業性感作物質、薬物および食品添加物(アスピリンやその関連薬物など)などに曝露して体調不良を感じたら、できるだけその原因となる物質を特定し、必要以上に近づかないようにしましょう。血液検査などである程度の代表的なアレルゲンは特定可能です。
さらに喫煙(受動・能動喫煙)、大気汚染(屋外・室内汚染物質)、呼吸器感染症、肥満なども喘息を招く恐れがあるため、予防が重要となってきます。現在成人の方はご自宅の環境や自身の生活習慣、職業などを鑑み、特にこの二次予防に力を入れるようにしましょう。
最後の三次予防は、喘息発症後の増悪の予防です。アレルゲンや非特異的増悪因子を避けることが重要です。
※写真と本文は関係ありません
取材協力: 浜口玲央(ハマグチ・レオ)
東京大学大学院医学系研究科博士課程。総合内科専門医。呼吸器専門医。がん治療認定医。
呼吸器内科医として、肺がんを中心としたがん診療の他、気管支喘息や肺炎・気管支炎、アレルギー疾患などの呼吸器疾患の診療に従事。現在、京都大学名誉教授の和田洋巳先生に師事し、がんの炎症・代謝を考慮したがん診療を行っている。その他、東京大学大学院医学系研究科にて、がん治療に関する臨床研究を行っている。
みらいメディカルクリニック茗荷谷勤務。