「ゲームソフトを借りていった友人が翌日に引っ越しをし、ゲームソフトが戻ってこなかった」――。こういった理不尽な状況に遭遇して沸々とした怒りを覚えた経験を持つ人もいるのではないだろうか。

このケースのように、日々の生活において社会通念上、「モラルに反するのではないか」と感じる出来事に遭遇する機会は意外と少なくない。そして、モラルに欠ける、あるいは反していると思しき行為であればあるだけ、法律に抵触しているリスクも高まる。言い換えれば、私たちは知らず知らずのうちに法律違反をしている可能性があるということだ。

そのような事態を避けるべく、本連載では「人道的にアウト」と思えるような行為が法律に抵触しているかどうかを、法律のプロである弁護士にジャッジしてもらう。今回のテーマは「テイクアウト料金で購入した商品のイートイン」だ。

  • 軽減税率適用料金で購入したパフェを店内で食べてしまうのはあり? なし??

24歳の男性・Cさんはある出版社の営業として日々、外回りに励んでいる。多いときには一日に5件もの企業訪問を行うため、一日の仕事が終わる際には足もクタクタで疲労困憊となっている。そんなCさんは大の甘党。特に疲れた日には、がんばった自分へのご褒美として帰宅途中にさまざまなスイーツを購入し、自宅でゆっくりと堪能している。

ある日、いつものように仕事を終えたCさんは、家に戻る途中で行きつけのクレープ屋に立ち寄り、お気に入りのクレープを購入した。「お持ち帰りですか? 店内で召し上がりますか?」とレジにて尋ねられたCさんは、自宅でゆっくり食べようと、テイクアウトする旨を店員に伝えて購入した後、店外に出た。だが、その日は10月にも関わらず真夏日を記録。夜のとばりが下りても、むんとした熱気を感じる蒸し暑さが残っていた。ここから家まであと5分ほどの道のりを歩く間に、たっぷりのアイスや生クリームをトッピングしたクレープが「残念な感じ」になってしまう可能性もある。「やっぱり、作りたての冷え冷えの状態で食べようか――」。そう思い直したCさんは、踵を返してこっそり店内へと戻り、イートインスペースでクレープを食べ始めた。

パクパクと食べ進めるうち、Cさんは思い出したようにふと「あ、そういえばテイクアウトとイートインでは消費税率が異なるよな……」。Cさんの立ち寄った店舗では「イートインコーナーを利用する場合は、購入時に申し出てください」などの掲示をしておらず、お客の一人ひとりにテイクアウト(税率8%)かイートイン(税率10%)かを聞いている。Cさんは軽減税率が適用されるテイクアウトで購入しておきながら、最終的に軽減税率が適用されないイートインでの食事を満喫する形となった。「結果的にお店側に嘘をついてしまったことになっちゃったな……。ただ、少なくとも購入時にテイクアウトしたいという気持ちはあったのは事実なので、問題はないはずだけど……」。そう思うCさんの胸中には、なんとも言えないもやもや感が残った。

このようなケースでは、Cさんの行為は法律違反にあたるのだろうか。安部直子弁護士に聞いてみた。