男性は罪には問われませんが、Gさんは1円玉による支払いを拒むことが可能です。以下でその理由をご説明します。

同じ硬貨による支払いは20枚まで

今回の事例では、お店を訪れた男性が何度も1円玉だけで支払いをしようとするので、コンビニ店長のGさんが大変困った事態に陥っています。このようなとき、Gさんが1円玉の数を数えて受領しなければならないとすると、レジ精算が滞って他のお客さんにも迷惑がかかりますし、店の業務にも支障が及ぶでしょう。

実はこういった場合の対応について、法律に規定があります。

「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」の第7条において、「貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」と定められています。つまり「1つの種類の貨幣によって支払えるのは20枚まで」ということです。よって、同じ貨幣を21枚以上出されたら、店側は20枚を超える部分を拒絶できます。

今回の件にあてはめると、男性は1円玉を100枚、300枚以上出していますが、Gさんは20枚を超える1円玉による決済を拒否して、別の通貨による支払いを求めることが可能です。

なお「同じ通貨は20枚まで」のルールは1円玉に限ったものではありません。10円玉や5円玉、100円玉、500円玉もそれぞれ「20枚まで」が限度です。5円玉10円玉などの細かいお金を大量に持ってこられた場合にも店側は21枚目の分から拒絶できます。

紙幣について

通貨の単位及び貨幣の発行に関する法律が「1種類で支払えるのは20枚まで」と制限する対象は「貨幣」のみです。「紙幣」については20枚以上出して支払うことが可能で、店側が拒絶することはできません。実際、日本では10,000円札が最も高額な紙幣なので、これが20枚までしか使えないとなると、1回に20万円までの買い物しかできなくなってしまいます。買い物をする際、1,000円札や5,000円札、10,000円札については何枚提示してもかまいません。

店側は受け取るか拒むか選択できる

今回、コンビニを訪れた男性が100枚、300枚といった大量の1円玉による支払いを提示し、Gさんは受け入れて決済を行っています。法律では「貨幣の額面価額の20倍までに限り法貨として通用する」とされているので、21枚目からの支払いは無効になるのでしょうか?

これについては、無効になりません。法律の趣旨は「大量の貨幣を出されると店側が迷惑するので、スムーズに取引を行うために20枚に限定する」ものです。店側の判断で21枚以上の貨幣による支払いを受け入れる対応は自由です。

大量の貨幣による支払いを提示されたとき、店側は「断ることもできる」し「数えて受け入れることも可能」で店側が受け入れる限りは有効です。

なお先日、ツイッターで以下のようなツイートが話題になっていました。

高校生がレストランの会計時に大量の1円玉を提示し、店側に「自分たちも全部数えたから、そっちも全部数えろ」と要求しました。店側ははかりを持ち出して「1円玉は1枚1グラムだから、はかりで重さを量って数えます」と言い、1円玉の枚数を数えることなく重量をはかって金額を計算し、会計を済ませました。

「まるで一休さんのとんちのようだ」などと感心され拡散されたのですが、実際には法律によると、店側は高校生による1円玉での決済を拒絶することができたのです。ただ、そういった法律はあまり知られていないですし、店側の対応は鮮やかですね。もちろん「はかりで重量をはかる」という機転を利かせて高校生側の支払いを受け入れた対応は法律的に問題なく、有効です。