運転スキルの問題? 手アンダー発生の原理

「手アンダー」とは、「(運転の仕方)によって発生させてしまったアンダーステア」のこと。ハンドルを切った角度(舵角)に対してクルマの曲がり方が足りないことを「アンダーステア」というが、手アンダーが発生するのはクルマの技術的な問題というよりも、運転者(つまり、今回はペーパードライバーである筆者)の運転スキルによる。ちなみに、ハンドルを切った角度に対してクルマが曲がり過ぎる現象は「オーバーステア」と呼ぶ。

その右折時、確かに少し、筆者は焦っていた。というのも、「右折の矢印がもうすぐ消えてしまうかも?」と思いながら、ピカピカの(当然ながら高価な)新型輸入車で右に曲がり始めていたうえ、右折して入っていく予定の道路は少し狭かったからだ。結果的に、筆者の曲がり方は足りず、右折の最終局面で大幅にハンドルを切り足すことになってしまった。

では、手アンダーを回避するには何を心がけて運転すればいいのだろうか。自動車ライターの大音安弘さんによる解説は以下の通りだ。

  • クルマのハンドル

    「ハンドルを回し足りなかった!」と思うこと、時々ありませんか?

一定の舵角で円を描くように走った際、速度を上げていくと、狙ったラインから外側に外れていくことを「アンダーステア」、内側に切れ込んでいくことを「オーバーステア」といいます。オーバーステアは内側に切れ込んでいく=スピンにつながるため、クルマは基本的に弱アンダーステアで設計するといわれています。

手アンダーはステアリングが切り足りない、あるいは切り初めが遅いと発生します。ただ、本当にゆっくり走れば手アンダーなど発生させずに曲がれるでしょうから、運転操作や道に対して、侵入速度が速すぎるともいえます。クルマを安定して走らせる秘訣ですが、無駄にステアリングを切らないように心がけるといいでしょう。

今のクルマはステアリングの応答性が高い(遊びが少ない)ので、基本的に、直進ではステアリングは一定で安定した直進走行が可能です。なので、昔のようにステアリングを細かく調整する必要はありません。緩いカーブであれば、少しだけステアリングを切ればよくなっています。

コーナーでは、ドライバーの視線も大切です。カーブだとクルマの目の前を見つめがちですが、視線は常に少し先の方、クルマを進めたい方向を意識しながらステアリングを切ります。そうすれば、ステアリングを切るタイミングもつかみやすいと思います。

丁寧に必要と思う舵角を与えてコーナーに侵入し、コーナリング時はハンドルの切れ角は一定に。そして、コーナー出口に向けてステアリングを戻していきます。もちろん、速度も控えめに。そうすれば、操作の遅れは起きにくいでしょう。もし連続コーナーならば、進行方向の先を見て、ステアリングを適切に切っていきます。

必要な舵角がつかみにくいければコーナー途中でのステアリングの微調整もやむをえませんが、丁寧な操作を心がけていれば、必要な操作量がつかめてくると思います。またアンダーステアの場合は、アクセルを緩めて速度を落とせば、同じ舵角でもクルマは内側に進んでいきます。

高速道路など、ある程度の速度で駆け抜けるコーナーで舵角を一定にできるようになったら、アクセルコントロールでのアンダーとオーバーの調整を覚えていきましょう。アクセルでの操作なら、クルマの挙動を乱さずに調整しやすくなります。これがスムーズな運転につながります。

  • クルマのハンドル

    カーブへの侵入速度が高すぎるとか、ハンドルの切り始めが遅いなどの理由で手アンダーが発生する

最近のクルマでは、技術的な問題でアンダーステアが発生することはほとんどないらしい。なので、クルマが曲がり足りないと感じる理由は、ほとんどが「手アンダー」によるものといえるだろう。筆者がいえた義理ではないのだが、右左折時に曲がり足りないことが多いと感じている方は、「カーブには十分に速度を落として侵入する」「視線は少し先の方へ」「適切な舵角を与えられたら細かい調整は不要」「大回りになりそうだと感じたら速度を落とす」といったことを念頭に置いたうえでハンドルを切ってみてはいかがだろうか。