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【答え】トヨタの「セラ」
それはトヨタの「セラ」というクルマです。
1990年に発売されたセラは“日常生活の枠を超えた胸を躍らせるような体感”を狙いに開発されました。ちなみにセラ(SERA)とは、フランス語のētre(エートル、~である)の未来形です。未来に向けてはばたく夢のあるクルマという思いを込めて命名したそうです。
最大の特徴は、やはりガルウィングドアといえるでしょう。あらゆる天候下でのオープン感覚の体験を実現するため、量産車としては日本で初めてドアガラスを天井まで回り込ませたガルウィングドアを採用しました。気温の変化に対してドア開閉の操作力を一定に保つ新機構も採用されていましたので、女性もターゲットに考えられていたのでしょう。
また、ヒンジの位置を工夫し、フロントピラーを軸に斜め上方にはね上げる方式にしたことで、通常のドアに比べ全開にしたときにボディ側面からの張り出しが少なくなるというメリットも生まれました。
ボディサイズは全長3,860mm、全幅1,650mm、全高1,265mmなので、いまのスズキ「スイフト」と同じ全長に非常に低い車高を備えていたことが分かります。1,500㏄のエンジンは110psを発揮していましたので、スポーツカーではなく、気持ちよく街乗りやドライブを楽しむクルマであることが伺えます。
ちなみに価格は160万円から188.1万円(東京渡し=当時は納車場所で価格が違っていることがありました)。同じ時期のクラウンが300万円ほどでしたから、その半分くらいのイメージ、つまり、今で言えば「カローラクロス」くらいの車格ともいえますが、それよりもはるかに遊び心あふれた個性的なクルマといえるでしょう。
まさにバブル経済の真っただ中だったからこそ生まれてきたクルマの1台です。当時の「スターレット」(いまのヤリスの始祖)をベースに開発されたセラは、1996年の生産終了までに約1.5万台から1.6万台生産されたと伝えられています。
遊び心あふれるセラが、もし今、登場したらどうでしょう。意外と、自分の価値を信じるZ世代などに受けるかもしれませんね。
余談ですが、実は同じ時期にもう1台(正確には2台)、ガルウィングドアを備えた軽自動車も発売されました。そのお話はまたいずれしたいと思いますのでお楽しみに。
※以下、2024年8月16日に追記
一部読者より、「このドアはバタフライウイングドアではないのか」というご指摘がありました。近年、跳ね上げ式のドアの種類が増えてきたことから、さまざまな呼び方も登場しています。セラのドアもルーフではなくフロント側にヒンジが付くので、近年の呼び名では「シザーズドア」あるいは「バタフライ(ウイング)ドア」となるでしょう。
しかし今回は、あくまでも当時のトヨタの呼び名を尊重させていただきました。そこにエンジニアのこだわりがあると感じたからです。当時、スーパーカーにしかなかった跳ね上げ式のガルウィングドア。これをどうしても作りたかったのですから。