1914年に軽井沢で温泉旅館を開業し、2023年で109年の歴史を数える星野リゾート。「旅を楽しくする」をテーマに、「星のや」「界」「リゾナーレ」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」のサブブランドを展開し、2023年1月以降は国内外に4施設をオープン予定です。今回はそんな新しいワクワクを生み出し続ける星野リゾートに注目! 今こそチェックしたい話題の施設を深掘りしていきます。

  • 「界 雲仙」の雲仙地獄パワーウォーク

第17回目は、地獄が目の前! という激レア立地に開業した「界 雲仙」2泊3日滞在記の後編。早朝の雲仙パワーウォークから始まり、全国の温泉ファンが憧れる名湯へざぶん。コンパクト雲仙温泉の町をそぞろ歩きをしてきました。

温泉もご当地グルメも、エンドレスに楽しい! 地獄の沼にハマる旅をお届けします。

→前編を読む 【前編】地獄なの?天国なの? 長崎「界 雲仙」で2泊3日の異世界トリップ

■三文以上の価値がある、早朝のアクティビティへ

  • 清七地獄の横にある「湯けむり橋」」

2日目の朝は早起きして、今回の旅で楽しみにしていた「界 雲仙」のアクティビティ「雲仙地獄パワーウォーク」へ向かいます。

ひんやりした空気が肌をさす中、向かったのは、もうもうと湯けむりを上げる雲仙地獄。湯けむり橋をスタートして、メジャーな地獄から穴場の地獄まで、ガイドさん役のスタッフさんと一緒にめぐります。

湯けむり橋周辺は、とにかく湯けむりの量がすごい……! 歩いていると、作りたてのゆで卵のような硫黄臭が"ぷんっ"と香り、「温泉地に来たぞ~」という刺激スイッチがオンに。

  • 杖は「吸って吐いて」の呼吸のリズムを取るのにも便利

マストアイテムは、専用の衣装と足袋、そして杖。これらは、すべて無料で借りられます。

「冬の早朝ツアーは絶対寒すぎるでしょ……」なんて思い込みは大間違い。この衣装が、想像以上にあったかい! 冷えは足元からきますが、足袋を通じて地獄の地熱が足の裏から伝わり、歩くたびにあたたかさが体に伝わります。

  • ベンチが用意されていたり、温泉たまごが販売されていたりする「お糸地獄」

しばし遊歩道を歩くと、強い硫黄臭がたちこめる「お糸地獄」に到着。グツグツと噴き出す湯けむりが異世界感を高めます。これぞ、まさに見える地獄。

  • 杖ではなく「金棒」を持った鬼気分で楽しむエクササイズ

地獄と名がつくだけあって、それぞれの地獄にはディープ&ダークな歴史があります。例えば、噴気の勢いNo.1の「大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)」は、その名の通り勢いよく吹き上がる噴気の音が、地獄の死者の声に聞こえることから名付けられました。

……近づくと、なるほど!「あ~、あ~」という低音ボイスが。地獄の底からもれてくる人のうめき声にも聞こえます。

そんな地獄感満載の「大叫喚地獄」では、鬼になったつもりで行うエクササイズにトライ。大股で一歩前に踏み出すと同時に、両手で持った杖を前に突き出します。大きな声を出しながら「お~!」「や~!」と声を上げると、すっかり気分は鬼。体も脳もシャキッと覚醒します。

  • 「界 雲仙」に引いている源泉と天然のろ過装置

こちらはガイドさんに教えてもらった、知る人ぞ知る地獄。この地獄から引き入れた温泉は"天然のろ過装置"を通過して「界 雲仙」まで運ばれるのだとか。

「雲仙地獄パワーウォーク」では、こんなレアでディープな情報を教えてもらいながらめぐれるので、旅が何倍にも楽しくなります。

  • 「旧八万地獄」は人が少ない、とっておきのヒーリングスポット

ゴール地点の「旧八万地獄(50周年広場)」は、地熱の作用で足元がポカポカ快適。さながら天然の床暖房です。ここに布団を敷いたら永遠に寝られそう……。

そんなスーパーリラックス空間で行うのは、ストレッチやヨガ。青空を見上げながら、体を伸ばすのが気持ち良い! 寒くてぎゅ~と縮こまっていた体がほぐれ、気持ちまで軽やかになります。

このアクティビティは、三文以上の価値がある! 早起きするのはちょっと大変ですが、ぜひ参加してみてください。

  • お部屋の露天風呂で地獄を眺めながらリラックス

アクティビティ後は、「界 雲仙」に戻って至福の露天風呂タイム。地獄を愛でながら絶景温泉を楽しめるのも、この宿の醍醐味(だいごみ)です。

■素材のおいしさが染み渡る「具雑煮」の朝ごはん

  • 具だくさんの「具雑煮(ぐぞうに)」。丸餅も絶妙なやわらかさ

運動後なので、おなかがペッコペコ。いつもより食欲旺盛です。朝食に出されたのは、島原で郷土料理として親しまれている「具雑煮」。

「具雑煮」は、とにかく具だくさん。山の幸から海の幸まで、いろんな素材の旨味がお出汁に溶け込んでいます。体に染み渡るおいしさって、こういうこと!

■地獄から湧く名湯で癒やしのひとっ風呂

  • レトロな外観の「小地獄温泉館」

おなかが満たされたら、気分はすっかりお出掛けモード。調べたら雲仙温泉で唯一、白濁したにごり湯に入れる場所を発見! しかも、九州全土だけでなく、日本全国から通うファンが多い入浴施設……そう聞いたら、行かないわけにはいきません。

期待に胸を膨らませて向かった先は、「界 雲仙」から車で約10分の「小地獄温泉館」。場所は温泉街から少し離れた、静かな山中の小地獄エリアにあります。

創業は古くなんと江戸時代から。近くの「青雲荘」の外湯としても使われています。

  • 受付には有名人や著名人のサインがずらり

受付は銭湯っぽい雰囲気。昭和にタイムスリップしたような、懐かしさが漂います。入浴料は大人1人460円。500円でお釣りがきちゃうのがすごいですよね。

  • 源泉が溜まった大きな湯だまり(※現在、関係者以外は立入禁止)

多くの温泉ファンを引き付ける理由は、なんといっても泉質の素晴らしさ。すぐ裏手に源泉があり、そこから循環させることなく乳白色の湯を浴槽に注いでいます。

今回、特別に源泉と湯だまりを見せていただきましたが、とても大きくて迫力満点! これだけの湯が、江戸時代から枯れることなく湧き続けていると思うと、感慨深いですよね。

  • 単純硫黄温泉(硫化水素型)をかけ流しで注ぐ、あつ湯とぬる湯の浴槽

それでは、名湯をいただきます! 先に入っていた常連さんの鋭い視線が、逆に刺激的。目が合ったので軽くお辞儀しながら湯船に入ると、「こんにちは」と挨拶してくれました。

緊張がほぐれたところで、かけ湯をして浴槽へざぶん。源泉がすぐ横! ということもあり、入った瞬間、強力な"湯の力"をぐっと感じます。

白濁した湯はどこかまったり。熱いけどマイルドです。あまりの気持ち良さに、ついウトウト……。まさに地獄という名の天国です。