まる子の声はTARAKOさんしかいない
――収録現場でのエピソードなどもお伺いできればと思います。
僕は監督になってからは、収録にはほぼ毎回立ち会っています。ふつうのエピソードのほかに、たまにじんわりするような情緒的なお話もやるんですけど、そういったエピソードの中で、キモになるシーンはリハーサルをやらずに一発撮りするんですよ。まる子役のTARAKOさんを含め、みなさんお芝居にかける力がすごいんです。みなさん『ちびまる子ちゃん』ワールドをずっと一緒に作り上げている方たちなので、阿吽の呼吸なんです。収録も早いんですよ。1話のアフレコだと1時間半くらいで終わりますね。
――それはかなり早いですね。TARAKOさんは、もうまる子の声が刷り込まれているくらいイメージにぴったりですよね。
はい。先生と同じでバイタリティがある方ですね。まる子を演じる上での引き出しも素晴らしいです。アフレコのときは絵を見ながら収録するのですが、こちらの、絵という要求に対して、それ以上のものを返してくれるんです。残念ながら立ち上げの際に私は新人だったので、TARAKOさんをキャスティングした詳しい理由はわからないのですが、先生が「(まる子の声は)TARAKOさんしかいない」とおっしゃっていたのは聞いたことがあります。
――高木監督もTARAKOさんも、30年近く『ちびまる子ちゃん』という作品に向きあって、現在は様々な方に愛される長寿番組となっています。ここまで作品が続いてきた理由とはなんでしょうか。
まる子が身近で等身大の女の子ということが大きいと思います。序列を付けるわけではないんですけど、ふつうの子、もしかするとふつうよりちょっと下かもしれない。そんなスーパーヒーローではない、親しみを感じられて、気楽に観ることのできるキャラクターだから人気があるのかなと思います。だからこそ共感してもらえるんじゃないでしょうか。そこにさくらももこ先生の笑いのエッセンスが入っているので、ずっと楽しんでいられるんだと思います。
――『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』もそうですし、たくさんのエッセイ本を読んできましたけど、笑いのセンスは唯一無二だなと思います。
独特の笑いのセンスがありますよね。シナリオライターさんとオリジナルのお話を作っているときに痛感します。どうしても原作に雰囲気を近づけたいと思っているのですが、難しいですね。
――変わらない良さがあるというのが『ちびまる子ちゃん』の魅力だと思いますが、改めて今後の作品作りについてお聞きできればと思います。
まさに『ちびまる子ちゃん』は変わらない作品ですね。ですが、いつも同じことをやっていると、観ている方を飽きさせてしまうのではないかと思っています。それは申し訳ないですし、こちらとしても情けないので、まだ我々も知らないまる子がいるのではないか、未知な部分があるのではないかと思っています。
まる子は実在の人物がモデルなので、極端にいじったり、変更したりすることはできません。ただ、まだ見たことのないまる子の一面はあってもおかしくないんです。いまある世界を守りつつ、少しでもいいからそういった未知な部分を見つけていきたいですね。これまでは先生が提供してくれていましたが、今後は我々の方でできる限り、まる子を掘り下げていきたいと思います。