テレビが生き残りをかけた時代に
――平成の30年という間で、テレビをめぐる環境の変化はどう感じていますか?
久米宏さんの『ニュースステーション』(テレビ朝日系)がスタートした時に2年間担当したんですけど、それ以前は、アナウンサーがワンショットで原稿を読むという形で、いわゆる“ニュースショー”というのはなかったんです。そこからニュースを分かりやすくするためにエンタテイメントとして見せようという流れがどんどん来ているというのをすごく感じます。あと、やっぱり若者がテレビを見ていないですよね。昔は娯楽の代表がテレビだったのが、そうではなくなって、生き残りをかけた大事な時期に来てるような気がします。
――橋谷さんは大学で授業もされていますよね。学生さんと触れ合って、実際に“若者のテレビ離れ”を感じることはありますか?
はい。立教大学では300人くらい授業に来るんですけど、最初の講義で「新聞読んでる人?」って聞くと、2~3人くらい。テレビもリアルタイムでニュースを見てる人というのは、かなり少ないです。じゃあどうやってニュースを知るのかと聞いたら、ネットニュースで、それも見出しを読むだけで、本文にも行かない人がすごく多いんです。
批判すべき時はちゃんと批判する
――それは我々としても残念な読まれ方です…。そういう時代において、『サンデーモーニング』の果たす役割というのは、どのように考えていますか?
やっぱりあざといことをしないで、伝えるべきことを愚直に伝えるっていうことでしょうね。ニュースがどんどん消化される中で、『サンデーモーニング』は、柔らかく分かりやすく伝えるけど、“ショー”にはしてないんです。最近はニュースでも「シャキーン」とか「パーン」といったSE(音響効果)や、大きなテロップをドーンって出すようなことを、よくやっていますが、それは絶対禁止。視聴者の皆さんはすごく賢いから、それで一時的に見てもらっても、「ここはあざとい番組だ」ってバレちゃうんです。
伝えるべきことをきちんと伝えるということで言うと、いろんな方によく「『サンデーモーニング』が本当に最後の砦だ」って言われるんですけど、政治についても批判すべき時はちゃんと批判するという姿勢を大事にしています。ただその分、原稿で使う言葉は、すごく注意深く吟味しているんですよ。他にも例えば、石川遼くんがすごい大人気の時に、スポーツコーナーでゴルフを取り上げる際、「石川遼選手は残念ながら7位でした」という原稿を作る番組もあると思うんですけど、それをやると関口さんは「1位が誰か分からないじゃないか!」って言うんです。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、ご自身にとって「平成」とは?
私がテレビキャスターをやってきた30年間は、激動の時代だったんです。東西ドイツ統一のベルリンの壁崩壊も現地でレポートして、教科書に載るような出来事の現場にいられたのが自分の中で財産なんですけど、冷戦が終わって世界の枠組みがものすごく変わって、「イスラム国」が出てきてテロが起きて、日本も地下鉄サリン事件があったし、東日本大震災も阪神淡路大震災もあって、こんなこと言ったら語弊があるかもしれないですが、ニュースに事欠かない30年だったと思います。
これからもどんどんいろんなニュースがあると思いますが、『サンデーモーニング』なりにきちんと伝えていくというのが番組、そして自分に課せられた使命なので、ちゃんと見て、ちゃんと伝えていくという気持ちを、いつも持っていたいと思います。