2019年4月30日に幕を下ろす「平成」。マイナビニュースでは、「平成」の中で生み出されたエンタメの軌跡をさまざまなテーマからたどる。この「平成を駆け抜けた番組たち」は、平成の幕開けと同じ時期にスタートし、現在まで30年にわたって続く番組をピックアップ。そのキーパーソンのインタビューを通して、番組の人気の秘密を探っていく。

第3回は、平成が始まる約1年前の昭和62(1987)年10月にスタートした、TBS系『サンデーモーニング』(毎週日曜8:00~)。先週(6月24日)の放送も日曜朝という時間帯ながら16.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)という驚異的な視聴率を獲得しているが、その裏にはテレビを知り尽くした司会者・関口宏のアイデアがあった。長年支え続けてきた橋谷能理子キャスターに話を聞いた――。

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    橋谷能理子
    1961年生まれ、香川県出身。東京女子大学卒業後、テレビ静岡に入社。その後フリーとなり、『ニュースステーション』『おはようCNN』(テレビ朝日)、『テレポート6』(TBS)などを担当し、89年から『関口宏のサンデーモーニング(現・サンデーモーニング)』(TBS)に出演。日本語講師として日本語学校で留学生に教えるほか、最近ではコミュニケーション講師として講演・研修・セミナーも行う。立教大学専任講師、東京女子大学非常勤講師。著書『伝わる力』(プレジデント社)。コミュニケ―ションに関するメールマガジンも毎月発行している。

和やかな番組で突然バトル勃発

――番組がスタートして31年目になる『サンデーモーニング』ですが、橋谷さんはどのくらいご担当されているんですか?

番組開始から2年たった時に入りまして、その後産休で抜けて戻ってきたので、合計で25年くらいになりますね。

――初期の頃と現在では、番組の雰囲気もだいぶ違いますか?

セットが違うので見た目は違いますが、番組に流れる雰囲気みたいなものはあまり変わらないという感じがしますね。キャスターも女性が複数いて、コメンテーターの皆さんもたくさんいるというのも変わらないですから。でも、初期の頃は張本(勲)さんがいなかったので、スポーツコーナーにあんなにパンチはなかったです(笑)。やっぱり張本さんと親分(故・大沢啓二さん)が入ってからのパンチ力がすごかったので、より柔らかい感じだったかもしれないですね。

――長い間担当されて、印象に残っているエピソードは何ですか?

いっぱいあるんですけど、スタジオに関して言うと、お亡くなりなった新堀(俊明)さんとケント・ギルバートさんが生放送で大ゲンカした時ですね。湾岸戦争の時だったかなぁ。安保関連の話題でぶつかってしまって、『朝まで生テレビ!』みたいな夜中の討論番組ではそういうこともよくありますけど、『サンデーモーニング』っていう日曜朝に和やかに流れる番組で突然バトルが始まったので「えーっ!?」って驚きました(笑)

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    関口宏(左)と橋谷能理子=1989年撮影 (C)TBS

――橋谷さんはスタジオを飛び出して、現場取材されることもよくありますよね。そんなときもいろいろあったのでは?

ここ数年だと、特番が毎年年始か年末にあるので、それで海外ロケに行くことが多いんですけど、ここ4~5年連続で極右政党にインタビューしてるんです。ギリシャとかドイツとか。一番すごいところでは、極右デモの取材の際に、銃声が聞こえたこともありました。ものすごく身の危険を感じましたが、逆に言うとこんな仕事してるからこその体験ですよね。

――そんな風に前向きに捉えられるんですね。

ジハーディ・ジョンという「イスラム国(IS)」の人質を殺害する実行犯とされる人の生い立ちをロンドンに取材に行った時、仕事の関係で1人でイギリスに入ったんですけど、入国審査が大変で…。飛行機で結構お酒を飲んで、寝て起きたら到着してたのもあって、テロ対策で厳戒態勢にもかかわらず、何のためらいもなく「イスラム国の取材でジハーディ・ジョンの高校時代の友人にインタビューするんです」と説明してしまったんです。そんなこと言ってたら係員がザワザワし始めて、1人しかいなかった入国管理官が他の人も呼び出したので、「あーこれは強制退去か、別室で長いこと尋問されるな」と思って、知りうる限りの英語を尽くして必死で「私は怪しくない人です!」ってアピールしたら、最後は向こうが「分かった、分かった」って通してもらったんです(笑)

――折れた(笑)。それは酔いもさめたでしょうね。

さめましたさめました(笑)

――他にも、印象的な取材はありますか?

あとは東日本大震災ですね。3年後、岩手から番組まるごと放送したことがありまして、帰りの新幹線に乗る前、キヨスクでお土産を買っていましたら、そこの店員さんが泣きながら私の手をギュッと握って、「放送見ました。ありがとうありがとう!」って言ってくれて。私は普通に仕事をしただけなのに…と思いましたが、「みんながどんどん忘れていく中で、やってくれて本当にありがとう」って言ってくれたんです。この時は「あぁ、やっぱりこの仕事して良かったな」って思いましたね。

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    『サンデーモーニング』(TBS系 毎週日曜8:00~)
    1週間の見逃せないニュース&スポーツを番組ではの視点で放送。張本勲がスポーツのプレーに“喝”“あっぱれ”を入れる「週刊御意見番」は名物コーナー。
    (C)TBS

ADにも気配り

――ここまで長く番組が続いて、今も毎週高い視聴率をマークしていますが、人気の理由はどのように分析されていますか?

やはりチームワークというのはものすごく大きいですね。関口さんは「スタッフや出演者がギクシャクしてると、それは絶対画面に出る」と言うんです。確かに、家でなんとなくテレビを見ていても、「この人たち本当は仲悪いんじゃないかな」って伝わってくるんですよね。視聴者の方はすごく賢いので、分かるんですよ。だから関口さんは、コメンテーターの皆さんと本番が終わった後にお茶を飲みながらワイワイと“反省をしない反省会”みたいな(笑)、そういう時間を大事にしてますし、スタッフと年に1回余興のほうが長いセミナー合宿に行ったりしています(笑)。全スタッフも一緒に50人くらいで行きますから、大広間を貸し切って、それでみんなのチームワークを確認しているんです。

――それで番組にファミリー感が漂っているんですね。

ADさんが新しく入ってくると、関口さんが私に「なんて名前?」って聞くんですよ。それで教えたら、関口さんが直接ADさんの名前を呼んであげるんです。そしたらADさんもすごくうれしいみたいで、誰が最初に名前覚えられたかって競争して(笑)。関口さんはその辺まで気を配ってますね。