睡眠と関係するホルモンはいくつかありますが、なかでも「成長ホルモン」は重要です。成長ホルモンは脂肪分解やタンパク質合成などに関わり、人間の生活に欠かせません。
年齢を重ねると成長ホルモン分泌が低下し、結果として「肌の潤いの低下」「骨密度の減少」「免疫力の低下」「気力の低下」を引き起こします。成長ホルモンは一晩に1~2回ほど分泌が増える時間があり、特に深夜2時頃が最も多いです。この時間に眠っていると疲労回復、体調の維持や向上に効果的です。
質の高い睡眠のためには、環境づくりも大切です。寝室は静かで暗く、快適な温度と湿度が保たれているようにしましょう。灯りは白熱電球のような暖色系の豆電球で、0.2~0.3ルクスの「足元灯」程度の薄暗さがよいでしょう。
さらに、寝具にもこだわりたいです。寝具が自身にフィットしていないと、肩こりや腰痛、疲労や睡眠不足の原因になります。枕の高さや硬さなど、自分の身体に合ったバランスのよい寝具を選んで使用することが、質の高い睡眠には重要なのです。
昼寝や寝酒はいいの?
「パワーナップ」という言葉を聞いたことがある人もいらっしゃるでしょう。平たく言ってしまうと昼寝なのですが、近年は日中の短時間の昼寝の重要性が叫ばれています。ただ、仕事をされている方はなかなか昼寝の時間を取りにくいのが現実でしょう。
十分な睡眠時間を確保できない場合は、「昼間約30分以内の仮眠」を心がけてみるといいですね。ランチ後の静かなカフェや、お昼休憩時に静まり返ったデスクでの適度な仮眠は、仕事の効率を高めてくれますよ。ただし、昼寝の時間が30分よりも長いと、夜の睡眠に悪影響をおよぼしてしまうため注意が必要です。
夜に寝つきが悪いと、アルコールや薬の力に頼ってしまうケースも出てくるかもしれません。日本人は寝酒をする傾向が高く、諸外国に比べ睡眠薬代わりにしている人の割合も高いです。お酒には眠りを進める作用はありますが、「睡眠後半に眠りが浅くなる」「利尿作用からトイレが近くなり、夜中に起きてしまう」といったデメリットもあります。
日本では「睡眠薬は怖い物で、お酒で眠る方が安全で安心」だと思う方も多いようです。私は、医師として不眠などの睡眠障害に悩む方は、早めに医療機関を受診して医師に相談することをお勧めしています。
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筆者プロフィール: 倉田大輔(くらた だいすけ)
日本抗加齢医学会 専門医、日本旅行医学会 認定医、日本温泉気候物理学会 温泉療法医。
日本大学医学部卒業後に、形成外科・救急医療などを研鑚。2007年に若返り医療や海外渡航医療を行う池袋さくらクリニックを開設。「お肌やアンチエイジング」や「歴史と健康」などの講演やメディア出演。海上保安庁が行う海の安全推進活動への執筆協力や「医学や健康・美容の視点」から地域資源を紹介する『人生に効く”美・食・宿”』を執筆。東京商工会議所 青年部 理事。