――事前にいただいたアンケートで、清水さんはぴろさんを「アーティスト」と表していました。

清水:間違いないですねぇ。やっぱ芸術家気質というか。僕はプレイヤーで、(ぴろが作る)作品の表現を一緒にやってる、っていう感覚ですかね。作品を作ることに関して妥協も無いですし、気概みたいなものは芸術家に近いのかなという気はしますよね。

――ぴろさん的に「アーティスト」という表現はしっくりきますか?

ぴろ:いや……恥ずかしいです(笑)。お笑いでやってることは、アートとデザインの真ん中くらいですね。

清水:お笑いアーティスト。

ぴろ:お笑いって(アーティストというより)デザイナーに近い感じはするんですよね。自分がむちゃくちゃ面白いと思ったことでも、お客さんが入りやすい形にしないと受け入れられない。そういうところまで考えて初めてお笑いだと思うんで。だからアートというか、自己主張を持った上でデザインもできる人であるべきかなと思うけど……全然アーティストで良いんですけど(笑)。結果、アート強めの雰囲気なんで。

清水:見た目とか、雰囲気も込みで。

ぴろ:そうそう。

――ぴろさんは、清水さんを「真面目」と表現していますね。

清水:……なんか、ちゃうなぁ(笑)!

ぴろ:いや、ひとことで言うとですよね。

清水:まぁまぁまぁ、間違っちゃない(笑)。

ぴろ:「真面目」で成り立ってる人なんで。失敗するときも成功するときも、良くも悪くも全部「真面目」が根底にある。だからひとことで言うと、「真面目」ですね(笑)。

清水:まぁ、ほんとに間違ってないと思います(笑)。

――清水さんは出てみたい番組として、ドラマや映画を挙げていましたね。

清水:いろんな人生を経験したいんですよ。だから、ぴろが作るネタでいろんな人格をやれるのが楽しくてやっている、というのもあったり。

――どういう役柄を演じてみたいですか?

清水:デカ(刑事)ですね。ぴろが作るネタでも、デカみたいに探りをいれるような役をやることが多いんですけど。

ぴろ:面白くなっちゃいますよ、清水さんがデカ役をドラマでやったら。俺らのネタを知らない人が見ても、多分面白くなっちゃう(笑)。

清水:まぁまぁ、どのくらい(ネタ中のような)表情を入れるか分かんないですけど(笑)。

忙しくなっても、ずっとネタをやり続けたい

――清水さんは、恩を感じている方として錦鯉さん・おぐさん(ロビンフット)・スーパー三助さん(にゃんこスター)を挙げていますね。これはどういう理由からですか?

清水:キュウって、1回解散したことがあるんですよ。その後半年くらいピンで活動してたんですけど、「どうにもならんからもう芸人自体を辞めよう」と思ったことがあるんです。そのときに辞めなくて済むきっかけを与えてくれたのが、おぐさんとスーパー三助さん。「清水がコンビ組んでみたい人とネタをやる」ってライブを開催してくれて。結局、そこでは誰とも組もうとならなかったんですけどね。

でも辞める時期を1~2カ月引き延ばしてくれたから、ぴろともう1度組むことができて、今こうやってやれてるんで。その期間が無ければとっくに辞めてましたからね。あと、解散を止めてくれたのが錦鯉さん。錦鯉さんの言葉が無ければ、ぴろが「もう1回キュウやりたい」って思うことも無かったかもしれないので……今、僕が芸人として存在できているのがこの4人のおかげなので、感謝してますね。

――錦鯉さんからはどんな言葉をかけていただいたんですか?

ぴろ:嬉しかったもんなぁ。

清水:芸人が解散とか辞めるって言っても普段は止めようと思わないけど、お前たちはもったいねぇよ、みたいな感じだよな。

ぴろ:錦鯉さんが、わざわざ俺らを呼び出してくれて。「今からメシ食うけど、なにしてんの」みたいな感じで電話が来て、行ったら清水さんもいて。思い出横丁の『情熱ホルモン』の2階席で、肉を焼きながら「お前ら解散すんなよ」って。ちょうど翌年(2015年)から『M-1グランプリ』が始まるってときだったんですよね。

清水:そうそう。

ぴろ:「来年からM-1始まんだろ。M-1なんて、お前らの大会だろ」みたいに言ってくれて。

清水:『M-1』のほうが、僕らのようなネタでも……

ぴろ:勝てるからって。当時は錦鯉さんと同じ事務所(ソニー・ミュージックアーティスツ)にいたんですけど、まさのりさんが「最近隆と、ソニーでM-1(決勝に)行きそうなのは俺らかキュウくらいだろって話してたんだよ~」みたいに言ってくれて。あぁ、嬉しいなぁと思って、それがずっと残ってたんです。解散してからも。

清水:アンケートで「面白い芸人」とか聞かれると、「キュウ」って言ってくれたりもしてたし。めちゃくちゃありがたい。

ぴろ:恩人、ほんとに。

――「行きそうなのは俺らかキュウ」と言ってくれた錦鯉さんが、昨年の『M-1』で決勝に進んだんですね。

ぴろ:錦鯉さんは元々面白かったし、ソニーの先輩の中でも1番尊敬してたので。昨年の準決勝で肩を並べられたのは嬉しかったですね。楽屋で会えたり、『M-1ツアー』(M-1決勝・準決勝進出者らが集結するライブ)で一緒になるのも嬉しかったし。

清水:最近は番組とかでも一緒になって。

ぴろ:今よりももっともっと下のステージから一緒にいた人と、あの頃より上のステージで会えるのは嬉しいですよね。だから追いつきたいです。

清水:そうね、追いつきたいね。収録が一緒だったとき、終わりで挨拶に行こうと思ったら、もう次の仕事に飛び出しで行かれてたりして。うわぁ、忙しいなぁって。やっぱ、ずっと先に行ってる人たちだって感じがしました。

――今後、仕事が増えてどんどん忙しくなっていくと思います。キュウさんが、忙しくなってもこだわっていたいことはありますか?

ぴろ:それ、最近すごく考えます。テレビの仕事とか呼んでいただくことが増えて、そのための準備もあって忙しくなってきて。今までなら時間があったからできたことができなくなってくると、どうしようかと考えることがあります。唯一決めているのは、単独ライブは絶対に年1回やろうってことですね。決め事はこれ1個にしとこうと思ってます。

――キュウさんの世界観を守りながら。

ぴろ:そうですね、自分たちだけの空間は常に持っておかないと。ネタをちゃんとやり続けている人でいなくちゃいけないって思っています。


連載「お笑い下克上2021」次回(最終回)はダイタクが登場します。