業界によって異なるが、「企業の中核を担う屋台骨的な存在として働く年代」と言えば、40代を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。この年代ともなれば、管理職などの役職にも登用されるようになり、それに伴い年収も増えてくる。その一方で、育児や介護のダブルケアに直面したり、子どもの教育費がかさんだりと、何かと支出が増えがちな時期でもある。
そこで本特集では、ファイナンシャルプランナーの佐藤章子氏に、40代を迎えたら最低限知っておきたいテーマの基本を解説してもらう。今回は「住宅ローン」だ。
住まいを手に入れるときは、それなりの勝算があって住宅ローンを借り入れていると思います。しかし、収入がこの先も安定して上昇していくとは限りません。病気やケガで働けなくなる可能性もありますし、リストラや会社の倒産もありえます。当たり前に起きるかもしれないそうした事態があっても、何とか乗り越えられるための対策は考えておきましょう。
物件選びが最大のリスク回避
万一住宅ローンの返済に行き詰まり、住まいを売却しなければならないときは、有利な条件で売却できる立地であることが何よりも重要です。立地条件の良い住まいは、中古物件でも本来の価値を維持し続けます。物価が上昇すれば、購入時よりも高く売却できることも不可能ではありません。
日本の不動産業界では、中古住宅は極端に価格が低くなりがちで、売却してもローンを完済できずに残債が残ってしまうケースもあります。そうなると、せっかくのマイホームを手放したうえ、残債の返済とアパートの家賃を支払っていかなければなりません。
ローン破綻以外でも、転職などで住まいを売却したり賃貸にしたりするケースが考えられます。売却できない、もしくは思うような金額で売れなかったら、それが破綻につながりかねません。中古住宅は極端に価格が下がりがちであることは、借り入れ時に想定しておきましょう。
固定金利で長めに借り入れる
40代はそろそろ「守り」に入る時代です。金利の上昇の心配のない固定金利で借り入れましょう。返済期間も少し長めに設定しておくとよいでしょう。ただし、高い収入が維持できる定年までに完済が必須ですので、途中での繰り上げ返済は必要です。
返済期間を長めにすると毎月の返済額は抑えられますし、返済が苦しくなる事態でも対処しやすくなります。そして、本来返せる返済期間による月々の返済額との差額は、繰り上げ返済資金にプールしておいてください。専用の通帳を用意するとよいでしょう。
かつて、住宅金融公庫の融資金利は長く5.5%でした。私もその金利で借り入れました。世界的に経済が安定するための妥当な住宅ローンの金利は、6%だそうです。少なくとも3%くらいの金利で返すつもりで、差額をプールすることをお勧めしています。特に変動金利で借り入れを検討する際は、3%の金利で算定した返済額での返済が無理な場合は、むしろ固定金利を選択ください。
ローン減税などの特例を活用しよう
住まいの取得にあたっては、さまざまな特典があります。住宅ローン控除や住まい給付金、贈与の非課税枠を利用して受け取った贈与、フラット35Sの金利の緩和などが一例です。
「住宅ローン控除」と聞いて、どんなことが思い浮かぶでしょうか。お得だと思いますか? ボーナスのようなものとして、レジャーやモノの購入を予定しますか?? こういった特例などをまとめるとかなりの金額になります。これらを別会計にして繰り上げ返済資金や苦しいときの返済資金にプールしておきましょう。
特に住宅取得資金の贈与を受けた場合は、本来の自分たちの実力以上の物件を手に入れるということになります。できれば、手持ちの資金はすべて物件につぎ込まず、少し余分に残しておいて有事に備えるといいでしょう。