先に紹介した3つは、比較的多くの人に該当するケースです。ただ、サラリーマンでも確定申告をした方が税金が減税される可能性のあるケースは、まだまだあります。以下に、特殊な例をいくつかあげてみました。

(4)ふるさと納税をした

近年は「ふるさと納税」をされる方も増えてきているようです。ふるさと納税をしていて「ワンストップ特例制度」を利用しない場合には、確定申告をすると寄附額の一部が所得税から還付され、住民税が減額されます。自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」を確定申告の際に添付して申告します。

「ワンストップ特例制度」とは、確定申告の不要な給与所得者などがふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる制度です。ふるさと納税先の自治体数が5団体以内で、ふるさと納税を行う際に各ふるさと納税先の自治体に特例の適用に関する申請書を提出すれば特例が申請できます。

(5)配当所得がある

株や株式投資信託などの配当などに対する課税方法は「総合課税」「申告分離課税」「申告不要制度」の3通りあります。申告分離課税と申告不要制度は上場株式に対しては所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%が徴収されます。所得税率が20.315%以下(概ね課税所得が695万円以下)であれば、申告分離課税を選択すると確定申告により所得税が戻る場合があります。確定申告書に配当所得欄がありますので、その欄に配当収入を記載します。

ただし、課税所得そのものは増加しますので、住民税や保険料などは増えます。住民税も含めて節税になりそうであれば、確定申告する価値はあります。住民税のみ申告不要制度を利用することもできますので、面倒ですが節税効果は高くなります。

(6)上場株式などの譲渡損失がある

「上場株式などの譲渡損失がある」または「その年の前年以前3年内の各年に生じた上場株式などの譲渡損失の金額のうち、前年以前で控除されていないものがある」ケースでは、一定の要件の下、申告分離課税を選択した上場株式などの配当所得などの金額から控除することができます。ただし、当該上場株式などの配当所得などの金額が上限となります。

(7)住まいの売却で損失が出た

住まい(居住用財産)を売却した場合は、その売却益に対する課税にはいくつかの方法があります。「マイホーム売却の3,000万円控除」「マイホームの買い替え特例」「マイホーム買換えの損失の繰り越し控除」「マイホームの譲渡損失の繰り越し控除」などです。売却した後の購入の有無など、自分たちに最も有利なものを選択することが大切です。

中でも「マイホームの譲渡損失の繰り越し控除」は、買い替えを前提にしないで売却した際、オーバーローンとなってしまった部分は3年間繰り越しして控除できます。5年を超えて所有していることや住宅ローンの返済期間が10年以上残っていることなどが条件です。譲渡損失の明細書や損益通算および繰り越し控除の計算書などを添付して申告します。

(8)その他のケース

グローバル化が進む中、年末も忙しく飛び回るサラリーマンも多いでしょう。年末不在などで年末調整の書類を作成できなかったときは、確定申告を行えば年末調整を行ったときと同じ結果が得られます。

また、その年の途中から扶養家族の条件を満たすようになったケースや年末調整後に結婚などで扶養家族の対象者が生じたケースなども、確定申告で控除が受けられます。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。