取得する住宅にもさまざまな要件が設けられています。以下にまとめましたので、住宅取得資金贈与の特例を検討する前にご確認ください。
(1)新築または取得した住宅用家屋の登記上の床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であること
(2)上記の1/2以上の部分が受贈者の居住用であること
(3)中古住宅の場合は、一定の耐震基準を満たすこと
(4)増改築の場合は、工事費が100万円以上で費用の1/2以上が居住用にかかるものであること
連載4回目でもご紹介した通り、住宅取得資金の贈与の特例には「住宅取得資金贈与の非課税特例」「相続時精算課税制度における住宅取得資金贈与の特例」「贈与税の配偶者控除」の3種類があります。特別な資産家でない限り、親からの住宅取得資金の贈与が最も一般的なケースでしょう。表も再掲しておきますので、違いを確認してください。
3種類ある住宅取得資金贈与
私は住宅メーカーに勤務していたとき、住まいやアパートの建設、地主向けの土地活用なども手掛けてきました。そうした仕事の中で、あるいは私自身の周辺で、「親が不動産を所有していて賃貸収入がある」「親から住宅取得資金の多くを提供される」「親が住まいの取得資金をすべて肩代わりしてくれる」「親が子どものために家を建てて提供してくれる」などのケースに多く遭遇してきました。
残念ながらこうしたケースに共通しているのは、「子どもが働かない」という点なのです。働かなくても親は十分な賃貸収入がある、そしていずれ不動産は自分たちが相続できる――。だから働かなかったり、支援を受けただけ生活水準を上げてしまったりしているケースが実に多いと感じます。
両親や祖父母から多額の住宅取得資金が贈与されれば、暮らしが楽になるだけ生活の幅が広がっていくのではないかと案じます。それでは、将来のリスク回避にはつながりません。
贈与する側は、贈与の上にあぐらをかかないよう、子どもや孫の生活設計をしっかり確認してください。また、受け取る側は、贈与がなかったつもりで生活設計をしてこそ、本当の意味で贈与の効果があることをぜひ考えていただければと思います。
■ 筆者プロフィール: 佐藤章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。