「生前贈与」は、一般の人々にも比較的よく知られているものです。特に住宅取得の際に親から資金援助してもらうケースは多く、贈与されても贈与税がかからない特例制度もかなり以前からありました。
ただし、その時々の社会経済の状況に応じて、特例制度は少しずつ変化しています。贈与とはどのような制度で、生前贈与やその特例にはどのような意味合いがあるのでしょうか。今回から複数回にわたって「生前贈与」についてまとめていきます。
贈与と相続では税額にかなりの開き
贈与
贈与は誰にでも行うことができます。逆に言えば、誰からも受け取れるのです。日本では受け取った側が必要な手続きを行い、受け取った額が贈与税の対象になる場合は贈与税を支払います。贈与の意味合いは「不労所得」であり、相続税と比較すると基礎控除額も少なく税率も高くなります。
相続
一方の相続は法定相続人が決められており、遺言で「特定の人に相続させる」と明記していない限り、法定相続人が相続します。法定相続人にはそれぞれ法定相続分(比率)が定められています。
ただし、法定相続人間で話し合えば、相続比率を変更できます。また、たとえ遺言で特定の人に「全財産を相続させる」と書かれていても、法定相続人には一定の遺留分が保証されています。
例えば妻と子どもが法定相続人となる場合を考えると、亡くなった夫の財産は妻の寄与分もあります。子どもが財産形成に寄与したケースもあるかもしれません。何より、遺産は今後の妻や子どもの生活に必要なお金や住まいです。そのため、贈与と比較して基礎控除額も多く、税率も低く設定されています。
では具体的に4,000万円を受け取った場合、贈与と相続ではどのような違いがあるのでしょうか。下記の通り、税額には大きな開きがあるのです。
「相続」は死後に財産が移動するのに対し、「贈与」は生前に財産を移動させるものです。しかし、「遺贈」や「死因贈与」という言葉もあります。また、売買や家族信託などでも財産の移転は可能です。下記の表は、財産を移転する場合の方法のおおよその位置関係を示したものです。