これまで5回にわたり、2019年10月に予定されている消費税増税をシリーズでみてきました。その中で誰もが考えることはやはり、ご自身の家計への影響ではないでしょうか。
過去にも何度か消費税率が上がり、そのたびに駆け込み消費をしてみたり、負担増をずっしり感じたりした人も多くいらっしゃったと思います。今回、日本で過去最高の10%の消費税率となることで、これまで以上にシビアに考えてしまう人もいるかもしれません。
そこで、本シリーズの最終回となる本稿では、消費税10%が家計に与えるインパクトはどれだけなのかを具体的に紐解いてみましょう。
消費増税で家計の負担はいくら増えるのか
消費税は、日本国内で事業者が事業として対価を得て行うモノやサービスなどの取り引きにかかるものです。日々の買い物によって消費税がどれだけかかるかは、各家庭の消費行動によって異なります。参考までに総務省が発表している「家計調査」をみると、2017年の1世帯当たり1カ月間の平均支出額(2人以上の世帯)は283,027円。この金額には消費税も含まれていますので、税抜き金額は262,062円です。
この消費内容が2019年10月以降も変わらないと仮定すると、消費税率が10%になれば288,268円になると計算できます。つまり、1カ月当たり5,241円、年間にすると62,892円の負担が増えることになりそうです。
この数字を見て驚かれた人は多いでしょう。しかしながら、このデータは調査対象のすべての2人以上の世帯の平均。年収が異なると消費支出の金額は変わります。
例えば、年収200万円未満の世帯の1カ月間の平均支出額は140,046円ですから、上のように計算すると、増税で増える負担は1カ月間で2,593円。年収500万円~550万円の世帯では平均支出額が261,233円ですから、1カ月間で4,837円の負担増となります。
ただ、マイホーム購入の記事でも説明したように、土地など消費税がかからないものもあります。ですから、このように単純に消費支出全体に2%の増税分をかけて計算するのは正しくありません。消費税がかからないものの中から家計管理に欠かせない品目をいくつかあげてみます。
家賃
人が居住の用に供することが契約で明らかとされている場合は消費税がかかりません。ただし、短期賃貸マンションのように1カ月未満の貸しつけには消費税がかかります。
教育費
学校教育法に規定する学校の入学金や授業料などには消費税がかかりません。外国語学校やビジネススクールなどであっても、修業年限が1年以上で、その1年間の授業時間数が680時間以上などの一定の要件を満たす場合は、授業料や入学検定料、入学金などに消費税はかかりません。
医療費・介護費
公的医療保険の対象となる医療費や薬代、また公的介護保険対象の介護サービス費や介護施設の利用料、車いすなど身体障害者用の商品には消費税はかかりません。しかし、これら以外の公的保険の対象とならないものには消費税がかかります。例えば、市販の医薬品や人間ドックの費用、美容整形、入院時の差額ベッド代などがあります。
このような消費税がかからない品目の消費に関しては、増税の影響はありません。
軽減税率も増税の影響は受けない
また、消費税が10%になる際には「軽減税率」が導入される予定です。軽減税率は、酒類や外食を除く「飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」に対し、今と同じ8%の税率が適用されるというものでした。つまり、消費支出の中で、飲食料品や定期購読の新聞に関する支出に対しても増税の影響は受けないことになります。
冒頭にあげたすべての2人以上の世帯を消費品目別にみると、家賃、酒類および外食を除く飲食料品、教育費、医薬品などへの支出額は89,170円。これと同じ消費スタイルならば、増税が影響するのは193,857円の消費支出にかかる分になります。
この税抜き金額は179,497円です。これに2%の消費税が加算されるとなると1カ月当たり約3,590円、年間では43,080円のアップということになります。冒頭で述べた金額よりは負担増となる金額が2万円ほど縮小されました。