安倍晋三首相は10月15日、臨時閣議で消費税率を2019年10月から予定通り10%に引き上げる方針を表明しました。今、働き盛りの人のなかにも「昔は消費税なんてなかった」「お小遣いでお菓子を買うにも消費税を払っていた」など、消費税に関する記憶はさまざまに異なっているでしょう。
消費税が初めて導入されたのは平成元年で、その平成も今年で終わろうとしています。その間、消費税はどう変遷してきたのでしょうか。そして、そもそも、日本の消費税の税率は世界各国と比較して高いのでしょうか。それとも低いのでしょうか。
そこで今回は、日本の消費税がどう移ってきたのかを解説するとともに、世界の消費税についても紹介します。
消費税導入までの紆余曲折
上述のように、日本で消費税が導入されたのは1989年(平成元年)4月。もう30年が経とうとしており、今では皆さんも消費税を普通に受け入れているのではないでしょうか。しかし、歴史を辿ると、日本では消費税導入が簡単に受け入れられたわけではなかったようです。
日本で最初に消費税の創設を打ち出したのが、1978年(昭和53年)の大平内閣です。財政再建のために「一般消費税」を2年後に導入することが閣議決定されたものの、翌年10月、総選挙中の結果を受けて導入断念を表明することになりました。
続いて1987年(昭和62年)、税制の抜本改革の一貫で、当時の中曽根内閣が「売上税」法案を国会に提出。国民的な反対に遭い、同年5月に廃案となりました。
そしていよいよ1988年(昭和63年)。7月に竹下内閣が消費税法案を国会提出し、12月に可決・決定。翌年の1989(平成元年)年4月から税率3%で消費税が導入されました。
このように、すぐには受け入れられなかった消費税ですが、当時の税制は所得課税にウェイトが偏っていたことや、累進度がかなり高かったことなどがあり、勤労世代を中心とした一部の世代に負担が偏っていたことが問題としてありました。そういった問題の是正などもあり、国民に広く・公平に税の負担を求めるものものとして消費税が創設されたのです。
3%から5%、そして8%に増税
導入されてからも、廃止や見直しが提案されては否決・廃案にされるなど、話題に事欠かない消費税でしたが、1994年(平成6年)に村山内閣が税率を3%から4%へ、さらには地方消費税1%を加えることを決定。これを受けて1997年(平成9年)4月から橋本内閣のもと消費税5%への引き上げが実施されました。
この増税で財政構造改革を掲げていたものの、相次ぐ金融機関の破綻やアジア通貨危機など、重なる金融不安で日本経済は不況に。「消費税増税は日本をデフレ不況に突き落とす失政だった」との批判を浴びることになりました。
その後、しばらく政権が変わっても、増税が封印されることになった消費税。15年経った2012年(平成24年)に野田内閣が消費税増税を含む社会保障・税一体改革関連法案を国会に提出。そのなかで2年後の2014年4月に8%、3年後の2015年10月に10%へと2段階で引き上げすること同年8月に可決・成立に至りました。
そして、2014年(平成26年)4月には第2次安倍内閣のもと、それまでの5%から8%へと消費税増税が実施されました。