中小事業者がキャッシュレス化を進める際、その障害になってきたのが「加盟店手数料(決済手数料)」の問題です。この問題に対して経済産業省は、2019年10月からキャッシュレス・消費者還元事業を推し進め、さらに2回に渡るマイナポイント事業も実施。店舗側の端末導入に補助金を出すなどの取り組みを進めていました。
その結果、日本のキャッシュレス決済比率は2023年に39.3%に達しました。「2025年までに4割」という目標の達成は間違いなく、これをさらに拡大することが次の目標となるでしょう。
そうした中で、決済事業者各社が中小企業向けの決済手数料を値下げする動きを加速しています。今回はそんな各社の動きをまとめてみました。
キャッシュレス決済の手数料をめぐる近年の状況
2019年のキャッシュレス・消費者還元事業では、加盟店に対して国が2/3、決済事業者が1/3を補助することで決済端末の無償提供が行われ、さらに加盟店手数料の1/3が国から補助されました。この時、加盟店手数料は「3.25%以下」に引き下げることが条件だったため、加盟店にとってはおおむね2.16%程度になっていたようです。
当時、この2%強の手数料であればキャッシュレス化ができるという加盟店の声もあり、手数料が2%を下回ればキャッシュレス化が一気に加速する可能性も感じられました。還元事業実施後の2021年から2022年にかけては、こうした加盟店手数料に関わるクレジットカード業界のコスト構造の分析が進み、手数料率の引き下げに向けた検討も進められました。
その後、2022年11月にはクレジットカードのインターチェンジフィーが公表され、2023年6月にはクレジットカードの加盟店手数料の配分率を国際ブランド(JCB)が公開しました。こうした取り組みの中で、公正取引委員会も「クレジットカードの取引に関する実態調査」を公開するなど、国の取り組みも続けられてきています。
以前は業種などによって加盟店手数料が異なるという不透明な面もありましたが、mPOS事業者などは3.25%程度の固定の手数料で展開され、中小店舗などではこうした手数料率も広まっています。
その間、利用拡大を目指したPayPayなどのQRコード決済陣営が加盟店手数料の無料化でシェアを拡大。しかし2021年10月からPayPayも2.18%の手数料を徴収するようになりました(月額2,178円の「PayPayマイストア ライトプラン」に加入すると1.76%)。
コード決済各社がクレジットカードと同様に手数料を設定したことで、複数の決済手段を加盟店に提供する決済代行業者では、おおむねどの決済手段も3%前後の構造になっています。