以上の基本を踏まえて、次のような難関シーンにおける品位ある対応を考えてみましょう。
「緊急要件なのですぐに連絡を取りたい」
取引先の方から渡辺部長に緊急の電話がかかってきましたが、渡辺部長は出張中です。相手にその旨を伝えると「緊急の要件なので渡辺部長に至急連絡を取りたい。携帯電話の番号を教えてほしい」と言われました。そのようなときはどう対応すればよいでしょうか。
携帯電話の番号などをはじめとする社内の個人情報は安易に教えないのが大前提です。以下にそのような場合の「品位を感じる電話応対の受け答え」を記してみます。
相手方「私ABC株式会社のカワノと申します。いつもお世話になっております。営業部の渡辺部長はいらっしゃいますでしょうか」
受け手「ABC株式会社のカワノ様でいらっしゃいますね。いつもお世話になっております。申し訳ございません。あいにく渡辺は出張中で、来週月曜日26日に出社する予定でございます」
相手方「そうですか。実は大至急、渡辺様にご相談したい件がございます。ご出張先にご連絡させていただくことはできませんでしょうか」
受け手「さようでございますか。それでは私から渡辺に連絡を取り、至急カワノ様にお電話するよう申し伝えますが、よろしいでしょうか」
相手方「ありがとうございます。ご無理を申し上げて恐縮ですが、できるだけ早くご連絡いただけますよう、くれぐれもよろしくお願いいたします」
受け手「承知いたしました。すぐに渡辺に連絡を取りますので少々お待ちいただけますでしょうか。私、江上が承りました」
というやり取りが考えられます。さて、電話を受けた社員が急いで渡辺部長の携帯電話に連絡してみましたが、つながりません。そのような場合は、携帯電話にメッセージを残した後、かけてきた相手にも電話をし、
受け手「カワノ様、お待たせいたしました。渡辺に連絡を取りましたが、あいにくつながりませんでした。至急カワノ様に連絡するよう、携帯電話にメッセージを残しましたので、しばらくお待ちいただけませんでしょうか」
と伝えます。現状がわかるだけでも、相手に安心感を与えることができます。そして最終的に、名指し人である渡辺部長がカワノ様に連絡したことをしっかりと確認することにより、電話を取り次いだ任務を完了することになります。
いかがでしょうか。電話は顔が見えないコミュニケーションです。声質や受け答えの仕方で印象を大きく左右します。「笑声」で、丁寧に、聞き取りやすく、相手に誠意を伝える対応をすることが大切です。
ビジネス電話は慣れるまでは誰もが緊張してしまうものです。決して焦らず、丁寧な対応を心がけて、電話をかけてきた相手と、取り次ぐ名指し人双方の気持ちに配慮することにより、品位のある社会人としての電話応対をしていきましょう。