世の中の大半の仕事は、人がいることによって成り立つ。そもそも取引先がいなければ仕事の受注がないわけだし、上司や先輩のサポートもなくいきなりバリバリと業務はこなせない。

多くの他人が関係してくる以上、相手に対する敬意やマナーが必要となってくる。だが、職場で使用するツールの使い方や業務上必要なタスクを先輩社員からレクチャーされることはあっても、ビジネスマナーをイチから教えてもらった機会がある社会人は少ないはずだ。そのような人は、無自覚のうちに礼節を欠いた態度をとってしまい、ビジネスチャンスを逸してしまう恐れがある。

そこで本連載では、筑波大学および札幌国際大学の客員教授を務めながら、大学や官公庁などで「職場に活かすおもてなしの心」をテーマとした講演や研修を手掛ける江上いずみ氏に、社会人として知っておくべきビジネスマナーを解説してもらう。

  • 電話応対のマナーを身に付ける

    電話応対のマナーを身につける

電話応対は会社の印象につながる

電話での応対はその人だけではなく、会社全体の印象を大きく左右しますから、電話のかけ方・受け方に関するマナーは新社会人にとってとても大切です。第6回では、「迅速に」「正確に」「親切・丁寧に」という3つの鉄則を紹介し、電話応対という「見えない相手」に対する配慮、気遣いをお話ししました。そして電話を取り次ぐ際の

A「お名前を頂戴できますか?」
B「佐藤部長はただ今席を外しております」
C「山田は本日お休みをいただいております」

の間違いについてお伝えしましたが、A~Cの正しい言い方は覚えていらっしゃるでしょうか。この第7回ではさらに具体的な「電話応対時のマナー」について考えていきましょう。

ビジネスフォンの使い方に慣れる

近年の新社会人は、子どもの頃から携帯電話やスマートフォンでのやり取りが普通であるため、固定電話の使い方に慣れていない人が多くいます。しかも友人同士の連絡方法は、LINEやメールによるコミュニケーションがほとんどなので、社会人になって初めての仕事といえる「電話応対」に予想以上に苦労します。

企業では多くの場合、ビジネスフォンという、内線と外線が併用できる電話機が使われます。会社によっては外線と内線の着信音を変えていることが多くあります。きちんとした電話応対をするには、外線と内線の着信音は聞き分けることが重要です。

外線電話なら「はい、株式会社○○でございます」と社名を名乗ります。内線の場合には「はい、○○部です」と社名は省き、部署名を伝えることになりますね。

また、直通電話でかけてきたときには社名・部署名の後に名前を名乗ることもあります。それぞれの職場において、使用している電話の特性を確認することが大切です。

相手の言葉を聞き取れないときの表現

先方の電波状況などによって相手の声が聞き取りにくいとき、先方に不快感を与えずに丁寧な言い回しで確認するにはどのように伝えればよいでしょう。

「お声が小さくて聞き取れません」
「もう少し大きな声でお願いします」

という返答は、聞こえにくいことを相手のせいにしている失礼な言い方です。そのようなときには

「申し訳ございませんが、お電話が少し遠いようです。もう一度お伺いしてもよろしいでしょうか」

という言い方で、聞き取りづらいことを先方に伝えましょう。

また相手が早口のときや、初めて聞く社名で聞き取れないような場合には

「恐れ入りますが、お名前の漢字を教えていただけますでしょうか」

と別の言葉で尋ね直すのも効果的です。