リモートワークのデメリットが目につくのはなぜか
なぜリモートワークのデメリットが目につくのでしょうか。その要因として大きいのが、「緊急避難的なリモートワークをなんとか続けてきたが、そのままのやり方で通常運用のリモートワークの付き合いとするには適していない」ということが挙げられます。
リモートワークが始まった頃は、オンラインミーティングの設定に手間取っていた方々も、今では慣れてき他と感じているかもしれません。これは、リモートワーク下でのメンバーマネジメント(リモートマネジメント)においても同様で、マネジャーはメンバーが見えない、わかりづらいという中でもなんとかマネジメントをしてきています。その点では、リモートワーク下での業務遂行やメンバーマネジメントについて習熟度が上がっています。
では、「通常運用のリモートワークの付き合い方とするには適していない」とは何を指すのでしょうか。
偶然を失ったマネジメント
1点目は、対面中心の業務遂行を、そのままリモートでも実施している点です。例えば、メンバーマネジメントにおいては、出社・対面中心のときのマネジャーの「得意技」が封印されたことから起きています。その得意技とは、「“偶然”と“ついで”の機会を使ったマネジメント」です。
対面中心のときにメンバーマネジメントをうまく行っていたマネジャーは、偶然とついでの機会を活用していました。たとえば、顧客に訪問する道すがら、メンバーの近況を尋ねたり、今後のキャリアについての考えを聴いていたりしました。オフィスで、メンバーが社用のスマートフォンにかかってきた電話で相手にお詫びしていたのを見たら、後でメンバーに状況を尋ねて必要な支援をするといったことも一例です。
しかし、緊急避難的な対応としてリモートワークに突入し、マネジャーとメンバーの物理的距離が離れた結果、偶然とついでの機会を使ったマネジメントが突然難しくなりました。リモートワーク下でも引き続きうまくメンバーマネジメントを行っている方も多いですが、一方で、放置のマネジメントか、対面中心だったときよりも細かくメンバーを見るようになる人も出てきました。
前者の放置のマネジメントでは、「相談があったらいつでも言ってね」とメンバーに伝えはするものの、相談が来ないことは良い知らせと判断し、メンバーのお客様や協働者からの突然の苦情で状況に気づきます。また後者の場合は、メンバーのことが見えない、わからないために心配になって、以前より細かいことを確認するようになったり、マネジャーが自身の時間を使うことで対面のときに実施していたマネジメントを続けようとしたりします。
リモートワークの根本的な特徴
2点目は、「リモートワークの持つ元々の特徴」との関係で生じている点です。リモートワークには、「導入してみると意外と良い施策だとわかるが、導入前の不安と懸念が大きい」という特徴があります。その特徴ゆえ、コロナ禍前は、トライアル実施を通じて、不安が杞憂であること、問題が起こっても解決が可能であることを証明してから、リモートワークを導入していました。
しかし、コロナ禍になり、このような不安や懸念を解決する機会がないままにリモートワークを導入し、慣れてきたが故に、改めて不安や懸念が気になるようになってきたのです。(一方で無理矢理にでも導入したことで、不安や懸念の一部は杞憂であったことがわかったという側面もあります)。
以上2点の理由から、現状において、リモートワークのデメリットが顕在化したり、強めに出てしまったりしています。そういう点で、今は、今後リモートワークと上手に付き合っていけるかの分岐点にあるともいえるでしょう。
筆者は、リモートワークを礼賛しているわけではありません。それぞれの企業や個人にとって、リモートワークとの良い付き合い方があると考えています。少なくても、リモートワークを経験した方々が多い現状において、リモートワークがなかった頃に戻すという方向性は採りづらいと思料します。
次回は、マネジャーやメンバーが、リモートワークとより良い付き合い方を見出すために、何をしていけば良いかを考えていきたいと思います。