新型コロナウイルス感染症拡大に伴う第1回目の緊急事態宣言が発出されて、約1年半が経ちました。この1年半で、リモートワークが働き方の1つとしてだいぶ認知されてきました。本連載では3回にわたり、リモートワークの現状、および、今後のリモートワークとの付き合い方について紹介します。第1回目となる今回は、リモートワークの現状を整理したいと思います。
エッセンシャルワーカーの方々など、リモートワークが難しい方々も多くいらっしゃるのが現状です。本稿は、少なからずリモートワークを実施している企業・団体の方々を想定して記載する点をご了承ください。
リモートワーク実施率はコロナ禍によって上昇
2021年8月の東京都のテレワーク実施率調査によると、東京都内の従業員30人以上の企業のテレワーク実施率は65.0%で、過去最高の数値になったそうです。また、テレワークを実施した社員の割合は、54.3%でした。テレワークの実施回数は、週3日以上の実施が51.6%となっています。
昨年2020年3月に実施した同調査では、テレワーク実施率が24.0%でしたので、コロナ禍前と比べれば実施率が大きく上がったことがわかります。一方で、この調査結果は緊急事態宣言下のものであり、緊急事態宣言が明けたら、原則出社の働き方に戻るのではないかという声も耳にします。
リモートワークのメリットと同時に、デメリットも感じている状況
リモートワークにはさまざまなメリットがあり、実際にそれを感じている方も多いと思います。たとえば、リクルートマネジメントソリューションズの調査では、テレワーク環境において、生活の質や家族との関係性の質が「高まる」「やや高まる」と回答した人が4割を超えたことが分かりました。
一方で、続くリモートワークのデメリットが気になっている方も多いでしょう。たとえば、テクノロジー疲れ(テック疲れ)など、すでに顕在化している内容から、対面での偶然の機会や化学反応が減ることによって、今後イノベーティブな仕事や機会が減るのではないか、といった将来に向けての懸念などが挙げられます。
また、新型コロナウイルス感染症の状況の変遷に伴って、企業がリモートワークをどのように捉えているかも変化しているように思います。最初の緊急事態宣言が出たときは、急激、一斉、大規模にリモートワークに突入しましたので、リモートワークが難しい企業や職種の方々は、自宅待機になるケースもありました。当時、リモートワークはあくまで緊急避難的対応であり、緊急事態宣言が明けた後には、リモートワークをやめるであろうと考えている企業の方も多かったように見受けます。
そこから約1年半の間、緊急事態宣言期間の延長、新たな緊急事態宣言発出などによって、緊急の状態が断続的かつ何度か延長されました。それに伴い、緊急避難的に始めたリモートワークがそのまま続いています。そして、現状では、新型コロナウイルス感染症の状況が読めない中、リモートワークはどこかで止めるものというよりは、多かれ少なかれ、これからも付き合っていかなければいけないものと感じている企業が多いのではないでしょうか(一括りに「日本の企業」と呼ぶのは乱暴ではありますが)。