――今回掲載されている写真の中で、お気に入りのショットをぜひ教えてください。

阿部:僕はこれですね。

【仲野と上出氏がそれぞれ寝ている写真】

仲野:好きやなぁ、俺らのこと(笑)

阿部:いつも僕が「休憩しよう」ってすぐ言うんですけど、2人は自分から「休憩したい」って言わないんです。でも、ある村に来た時に、2人が「休憩しようぜ」と珍しく言って、「ようやく言ったなあ」と思って気づいた時には、2人とも寝ていたんです。「やっぱり疲れてるんだ。かわいいな」と思って撮りました(笑)

仲野:「痩せ我慢してたんだな」みたいな?(笑)

上出:阿部ちゃんはすぐ「上出さんはプライドが高いから、“疲れた”って言わないだけで痩せ我慢してる」とか言うけど、俺ら疲れたことないからね。でも、あそこは気持ち良かったね。

仲野:私のお気に入りは、この“MPCショット”です。

【3人が遠くの景色を見つめている写真】

仲野:MPCで活動してると3ショットを撮るのが難しいんですよ。でも、今回旅の道中でパサンと出会い、まるでMPCの肖像画のような写真を撮ってくれました。この旅を代表するシチュエーションだと思いますね。

――これは皆さんどこを見ているのですか?

阿部:次のページにあるランタン村を見ているんですよ。

――写真のセレクトは阿部ちゃんがされたのですか?

仲野・上出:任せました。

阿部:数千枚から選んで、僕とデザイナーさんでリズム感が出るようにとか、いろいろ調整してレイアウトを何度も打ち合わせして詰めていきました。300ページ以上あるので、写真を何か所か変えると他のページまで全部調整しなきゃいけないんで。自分が旅で撮った写真をここまで見返すのは、初めてだったかもしれないですね。

道中で仲野太賀の後任を話し合う

――MPCの今後の活動の構想はいかがでしょうか?

上出:今回の本が「1st BLAZE」と言ってるんで、3つくらい旅をして、それをひとまとめにしてでかい本を作って、そこからまた次のシーズンに行こうと思ってます。旅自体はノンストップで続いていくので。

――今回の旅は、記録メディアが音と写真だったのが、皆さんの自然体を伝えられた要因だと思うのですが、そう考えると映像コンテンツにするという考えはないですか?

阿部:スマホで少し撮ってはいるんですけど、本格的に機材を持ち込むと荷物が重くなりすぎて、純粋な旅から離れてしまいますからね。

上出:1週間になるとバッテリーの充電もできないですし。

仲野:映像になるとやっぱり仕事っぽくなっちゃいますからね。それは嫌なので、なるべく仕事からかけ離れた機材で行きたいなと思います。

上出:本というのは至高の創作物だと思ってる部分があるので、僕たちには憧れがあったんですよ。その付属的なところで音くらいまでだったらいいなと思いますけど、映像を作るのはちょっとキツいですね。本だと配りに行けますし。

仲野:本当にいいですよね。これまでこんな本はなかったと思うんです。

――どの写真も素敵ですし、ランタン谷の文化や歴史も学べるし、本当に旅に同行してる気分になれますし、何よりこんなに笑った旅本は初めてです。タレントさんを前にして申し訳ないのですが、阿部ちゃんの一挙手一投足が面白すぎて、一番存在感を放ってました(笑)

仲野:全然いいんです(笑)。もう引っ張られますよね。ただ、こんなにいい旅ができて、いいメンバーが集まったって言うんですけど、阿部ちゃん本当にひどくて。旅の途中で、「この旅ってさ、太賀以外だとどんな俳優さんが行けると思う?」って無邪気に言うんですよ! 悪気なく。

――本人を前にして(笑)

仲野:せっかく「MPC」ってクルーの名前つけたのに、「ねえ上出さん、これ野村周平さんとかだったらどうなるのかな?」って。

――またリアルな名前を(笑)

仲野:平気でメンバーチェンジしようとするんですよ。シーズン3まではなんとかいれそうなんですけど、シーズン4から僕、残ってるかちょっと分からないです(笑)

阿部:ごめん……

上出:野村周平じゃなくて、菅田将暉じゃないの?(笑)

仲野:こうやって引きの強い名前を言うんですよ。

上出:菅田さんだったら、俺と阿部ちゃんが弱すぎて来てくれないか。

――でも、3人旅で先頭を歩いてくれるタレントさんなんて、いないですよ。

仲野:いないです、そんなタレント。

阿部:でも太賀くんは、感情がちょっと出ちゃうんですよ。ちょっと不機嫌な時とかあるので、それはやめてほしいんですよね。

仲野:少しは出てもいいだろ(笑)

●仲野太賀
1993年、東京都生まれ。俳優。06年に俳優デビュー。21年に公開された映画『すばらしき世界』で第45回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第64回ブルーリボン助演男優賞などを受賞。22年にはエランドール賞新人賞も受賞した。近年の主な出演作にドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ)、連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)、映画『本心』『十一人の賊軍』『笑いのカイブツ』『熱のあとに』など。26年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)で主演を務める。

●上出遼平
1989年、東京都生まれ。テレビディレクター、プロデューサー、作家。11年にテレビ東京に入社。ドキュメンタリー番組『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画、演出から撮影、編集と、制作の全工程を手がける。19年に同番組7月15日放送分が第57回ギャラクシー賞優秀賞を受賞。著書に『ハイパーハードボイルドグルメリポート』『歩山録』『ありえない仕事術 正しい“正義”の使い方』など。

●阿部裕介
1989年、東京都生まれ。写真家。青山学院大学経営学部卒。大学在学中よりアジア、ヨーロッパを旅する。在学中、旅で得た情報を頼りに、ネパール大地震による被災地支援(15年)、女性強制労働問題「ライ麦畑に囲まれて」や、パキスタンの辺境に住む人々の普遍的な生活「清く美しく、そして強く」を対象に撮影している。日本での活動として、家族写真のシリーズ「ある家族」がある。

・書籍『MIDNIGHT PIZZA CLUB 1st BLAZE LANGTANG VALLEY』(講談社)
 著者名:仲野太賀、上出遼平、阿部裕介
 価格:2,500円(税込2,750円)

・Audible『MIDNIGHT PIZZA CLUB』も配信中