改めて、岡さんはどんな人だったのか。大堀氏は「段取りの仕方も悪いし、棒の振り方もおかしいから、いつもこっちがとばっちりを受けて、決して信用できる指揮者ではなかったです(笑)。でも、いないと寂しいですね。すごく寂しいです」、相澤氏は「リハでは“ちゃんとやれよ”っていつもブツブツ小言を言うんですけど、次の日は“お疲れ様~”ってケロッとしてる。そういうさっぱりしたところがありましたね」と振り返る。
岡さんにかけられた忘れられない言葉を聞いてみると、一見乱暴な言い回しでありながら、情に厚い人柄が浮かび上がってきた。
「ある現場で、僕がソプラノサックスに持ち替えて吹いたら、真正面にいた岡さんにその音が直撃したんです。そしたら、休憩時間に控え室で“大堀のソプラノ、チャルメラみたいだよな!”って言うんで、もう頭にきて(笑)。その日の演奏が終わるまで我慢して“あんなこと言われたら、普通帰りますよ!”って言ったら、帰りの車で“さっきは言いすぎた。ごめんね”ってメッセージが来ました(笑)」(大堀氏)
「“小学生みたいだな”とかいつもボロクソに言われるんですけど、ある時にCDを作って、僕がアドリブソロをやったら“なんかスウィングしてるな”って言ってくれて。ボロクソに言われた後の褒め言葉は、やっぱり覚えてますよね(笑)」(相澤氏)
語り口調は厳しく、「思ったことを全部言う人」(大堀氏)だったものの、「本当に憎めないキャラなんです」(相澤氏)という。
「お客さんがいるから、俺たちの音楽は成り立ってるんだ」
そんな岡さんに立ち向かったメンバーもいたそうで、「昔、あるメンバーが岡さんに“ちゃんとやれよ!”って言われたら、“岡さん、あんたこそちゃんと棒振れよ!”って返したんです(笑)」(相澤氏)という出来事も。それでも、「岡さんはメンバーがイエスマンばかりじゃなくて、“そこ違うでしょ”と言ってくれる人のほうが好きだったね」(同)と述懐する。
出場者に岡さんの印象を聞くと、皆一様に優しい人柄を語っているが、音楽のプロであるバンドメンバーに対する接し方は別だったようだ。
「プロとしてのステージマナーも教えてもらいましたね。“走るんじゃない。ゆっくり悠然と歩くんだ”とか、MCをする時に“もっとゆっくりしゃべれ。それじゃ何言ってるか分かんないよ”とか。聴いてくれるお客さんがいるから、俺たちの音楽は成り立ってるんだとよく言っていました」(相澤氏)
葬儀は、その人柄を表すようなものだったという。
相澤氏は「出棺の時に、クリアトーンズのCDをかけたのですが、どんな曲にするんだろうと思ったら、『セントルイス・ブルース』で賑やかに送り出しまて、岡さんらしいなと思いましたね。生前、メンバーの葬式で“俺の葬式は湿っぽい雰囲気になるのは嫌だ。華々しくやってほしいな”と言っていたんです」と明かしてくれた。
『第33回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』出場者 ※【 】内は出場回数
1:東京ガス(株)埼玉支社・細田千恵支社長【3】/小泉今日子「学園天国」
2:熊谷市・小林哲也市長【初 ※埼玉県議会議長として出場実績あり】/坂本九「上を向いて歩こう」
3:YKK AP(株)埼玉支社・水野彰二支社長【2】/EXILE「LA・LA・LA LOVE SONG」
4:(株)埼玉りそな銀行・福岡聡社長【4】/沢田研二「勝手にしやがれ」
5:ふじみの救急病院・鹿野晃名誉院長【初】/「BELIEVE」※合唱曲
6:(株)シタラ興産・設楽竜也社長【初】/長渕剛「しあわせになろうよ」
7:戸田市・菅原文仁市長【4】/B’z「兵、走る」
8:(株)コマーム・小松君恵会長【3】/「こどもパワーGO!!」※オリジナル曲
9:埼玉県議会・齊藤邦明議長【初】/MISIA「アイノカタチ」
10:(株)サイサン・川本武彦社長【17】/矢沢永吉「サイコーなRock You!」
11:川口市・奥ノ木信夫市長【9】/チューリップ「心の旅」
12:ケアハウス和みの里・山中和子理事長【17】/坂本九「明日があるさ」
13:富士見市・星野光弘市長【3】/桑田佳祐「100万年の幸せ!!」
14:(株)馬車道・木村徳治名誉会長【18】/石原裕次郎「サヨナラ横浜」
15:さいたま市・清水勇人市長【15】/THE BLUE HEARTS「TRAIN-TRAIN」
16:(株)清水園・清水志摩子社長【33】/ペギー葉山「歌ある限り」
17:埼玉県・大野元裕知事【5】/はなわ「ニュー咲きほこれ埼玉」