• 小川菜摘

舞台復帰してから12年経つが、小川は「今も新人女優の気持ち」だと語る。

「もう還暦を超えていますが、20年以上ブランクがあるので、本当に一生懸命、全身全霊で取り組んでいかないと皆さんに追いつけないなと。いつも学ぶことばかりですが、一作品一作品どんどん吸収して、それを次の舞台で生かせるようにと心がけています」

自分自身も一生懸命取り組んでいる人に魅力を感じるという。

「一生懸命頑張っていたら、誰かが観て評価してくれるだろうし、自分のためにもなると思っています。お芝居が上手でも下手でも、一生懸命取り組んでいる人は魅力的だなと思うので、私はそうでありたいなと思います」

どの作品でも、演出家の言葉や自分でひらめいたことなどを台本に書き込むようにしているそうで、「『新人女優さんみたいですね。台本真っ黒じゃないですか』とよく言われるんです」と笑いつつ、「いつまでも私は新人女優の気持ちで必死にやらないとついていけないと思っているので、これからも取り組み方は変わらないと思います」と語る。

このたび立ち上げた演劇集団・熟年団は、小川とアサヌマ理紗の「愉快な人たちと楽しい舞台を作りたい!」という呼びかけに、村上大樹、今林久弥、小林タカ鹿、千葉雅子が集結し、アサヌマ以外のメンバーが熟年世代だったため、「熟年団」と命名。さらに、熟年ではない、若手実力派の冨岡健翔、加藤夕夏も加わった。

「舞台共演をきっかけにアサヌマ理紗ちゃんと年の離れた友達になり、すごく仲良くなって、『何かやりたいよね』という話になって。『村上さんにやってほしいよね』『あの人が出たら面白いよね』と妄想の世界で2人で盛り上がっていたので、本当に実現してびっくりしています」

そんな熟年団が今回挑むのは、25年前に初演された名作、鈴木哲也脚本『チェリー・ホープを知ってるかい。』。1999年の大みそかに、生まれ育った一軒家に久しぶりに集まった姉弟たちの家族をめぐる物語を描く。小川は今回も、観客の反応を楽しみに稽古に励んでいる。

「セリフを入れていく時期は本当に苦しいですが、本番は私たちカンパニーが楽しんでやることによって、観に来てくださるお客様も楽しめると思うので、楽しみながら届けたいです」

61歳の今も、パワフルに活動している小川。女優という自分のやりたいことができているからこそ、元気でいられるという。

「若さを保つ秘訣は、芝居に関して悩んだりしている思いが脳をフル回転させているだろうから、それがパワーの源になっているのかなと。家に帰るとくたくたですけどね(笑)」

今回小川が演じる長女『あおい』は、40歳頃という設定。「実年齢より若い役を演じるのはけっこう大変なんです(笑)」と吐露しつつ、女優業は自分とは違う人物を演じられることも醍醐味だと語る。

「私の価値観では、こんなこと絶対言わないだろうなということもありますし、例えば極悪人の役だったら、自分の中に全くない部分を出さないといけない。それを想像で演じて作っていくのが役者の仕事なわけで、そこを体感できるというのは面白いなと感じています」