フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で11月17日・24日・12月1日の3週にわたり放送される『炎の中で死んだ父を僕は知らない』。自分の人生を翻ろうし続けた画家の父・落合皎児(こうじ)さんの足跡をたどる“旅”を半年にわたり繰り広げたのが、テレビディレクターの落合陽介ギフレさん(44)だ。

この活動で父や彼の絵への思いにどんな変化があったのか。そして自分自身、何を得ることができたのか。予想外だったという同じような境遇の人たちからの反響なども含め、話を聞いた――。

  • 亡き父のアトリエに遺された大量の絵画に囲まれる落合陽介ギフレさん (C)フジテレビ

    亡き父のアトリエに遺された大量の絵画に囲まれる落合陽介ギフレさん (C)フジテレビ

常に考えていた「放棄」の選択肢

今年4月、画家・落合皎児さんが火事で亡くなった。長野の実家に駆けつけた息子の陽介ギフレさんに遺されたのは、父が描いた1,000点もの絵と約1,500万円の借金。かつて、ピカソやミロといった巨匠と並ぶ「スペインの現代作家150人」に選出された父だが、もし絵画を相続するなら、父の借金も全額相続することになる。父の絵を守る方法を探して、陽介ギフレさんは生前の父を知る人々を訪ね回る旅に出た。

幼い頃から両親は不仲で、中学校から実家を出た陽介ギフレさんは、父のことをよく知らない。その後、母は心を病み孤独死、弟は20歳で命を絶った。なぜ父は家族をバラバラにしてしまったのか。いつしか息子の旅は、その答えを探す旅へと変わっていた……。

この半年を「親父と絵のことを知る中で、自分自身の心がどこまで腑に落ちるところまで持っていけるかの旅だった」と振り返る陽介ギフレさん。「やれるだけのことをやって、ダメだったら諦めるつもりでずっといました」と、父の遺した借金と絵を放棄するという選択肢も常に抱えていたことを打ち明ける。

  • 父の親友・倉石さん(右)を訪問 (C)フジテレビ

父の親友が自分の親友に

今回の旅を通して、2つの“つながり”を得ることができたという。一つが、今は亡き自身の家族だ。

これまでは、ふとした瞬間に家族について聞かれても、「楽しい飲みの場で話すことではないし、話しにくい話題だった」というが、「そうやって何十年もフタをし続けていたものを今回全部開けて、それをカメラにも公開することで、かけがえのない家族とのつながりが得られました。人生観もすごく変わりましたね」とまで語る。

もう一つは、父の親友たち。特に、最後の最後まで父の面倒を見てくれた居酒屋の主人・譲二さんと、父の日記に「幼なじみ」としてたびたび登場していた倉石さんは、陽介ギフレさん自身も親友と呼べる間柄になった。

「この2人は、僕のことを心の底から思ってくれているんです。今回出会った中には“何とかお金になったらいいですね”とか“芸術とはこうなんだ”と言う人もいっぱいいたけど、特に倉石さんは“借金を背負うとか考えなくていい。落合皎児はお前の養育費を1円も払わずに好きなことやって生きてきたんだから、残ったものを全部金にしてお前のために使うんだったら、死ぬほど応援するから”と言ってくれたんです」

第1話、第2話の放送が終わって「見たぞ! 最後までやり切れよ!」(譲二さん)、「良かったな!」(倉石さん)と真っ先に連絡をくれたのも、この2人だったという。