印刷会社提供のテンプレートを使うべき?

——スマートデバイスを使ってマンガを冊子印刷する際にありがちなトラブルは、何かありますか?

今村 特にスマートデバイスだから起きる、というトラブルはありませんね。

——そうなんですか! みなさん、もうデバイス関係なく同じように作業していらっしゃるのですね。では、全般的に見てよくあるトラブルというといかがですか?

今村 多いのは原稿サイズの間違いです。入稿時点でサイズを間違って選んでしまった場合もありますし、正しいテンプレートをご選択頂いていてもダウンロードしたテンプレートの読み込み・アプリからの書き出しでサイズが変わってしまった、などが原因だと考えられます。当社サイトでサイズ別の本文用テンプレートを配布しているので、そちらお使いいただき、読み込み・書き出しでは解像度などの設定にご注意いただくとよいかと思います。アプリにデフォルトで入っている汎用の原稿用紙テンプレート等でも問題なくご入稿いただけますが、表紙だけは必ず当社が配布するテンプレートをご使用いいただくようお願いしています。

——冊子の仕様に合わせたテンプレートを使う必要があるからですね。

今村 はい。冊子印刷は、紙の種類(厚み)とページ数によって「背幅」が変わります。当社ホームページに背幅を計算するツールをご用意していますので、そこで背幅を確認し、適した背幅の表紙テンプレートファイルをダウンロードしてお使いください。当社は、入稿の際に表紙ファイルのピクセル数を機械的にチェックしており、ご注文の仕様と合わない場合はファイルをアップロードできない仕組みになっています。

  • 使用する紙の厚みとページ数によって背幅が変わるため、その冊子の仕様にあわせた表紙テンプレートを使う必要があります

——そうやってトラブルを防いでいるわけですね。

今村 そうなんです。それと、もう一つ大事なのが、裁ち落とし位置の問題です。当社では原稿ファイルの中央を基準に指定ピクセル数で上下左右を裁ち落としているので、トンボは使わないのです。他にもいろいろな印刷会社・アプリが「表紙用テンプレート」を提供していますが、トンボの外側に社名や注意書きがあったりして、描画エリアの配置が中央でない場合があります。そうすると、当社のやり方では裁ち落としの位置が合わなくなってしまうのです。

——なるほど、御社のテンプレートにトンボがないのはそういう理由だったのですね。紙原稿の時代を知る者としてはちょっと驚いてしまいました。

“塗り足し”領域に塗り足すのは背景色?

——携帯端末用の表紙テンプレートを開くと、透明な画面に色違いのガイド線と説明書きが表示されていますね。

今村 はい。まず、青い線が仕上がりサイズです。ただし絵柄は青い線の外側にある“塗り足し”の領域まで書き込んでください。時々、塗り足しは背景色だけで、絵柄が青い線で終わっているケースがあるのですが、絵柄も塗り足しまで描いていただきたいです。

——“塗り足し”は背景だけ塗って足す領域ではなく、絵柄まで含めた“描き足し”領域と考えた方がいいのですね。

今村 そうですね。それと、タイトル文字や絵柄の大事な部分は、赤い枠の内側に入れていただくと安全です。書き終わったらテンプレートのガイド線レイヤーは削除して、その他のレイヤーをすべて統合して入稿してください。余計なレイヤーが残っていると、入稿時のチェックにエラーが出て、アップロードできません。

——ここも機械的にチェックされるのですね。本文用テンプレートの方はいかがですか?

今村 本文ページも同様に、裁ち切りのコマは塗り足しの一番端まで書き込んでください。大事な絵柄や文字は内側の「安全圏」に納めましょう。また、本文ページは綴じ位置にも注意が必要です。背綴じ冊子の場合、「ノド」に近い部分は見えにくくなってしまうので、安全圏であってもギリギリまで絵柄や文字を入れるのは避けていただいたほうがいいですね。

——スマートデバイスで1ページずつ描いていると見落としやすいポイントかもしれませんね。この場合、見開きページはどうしたらいいですか?

今村 当社は見開きの状態ではご入稿いただけないので、見開きで描いた場合は左右に分けて別々にデータを作成して頂く形になります。具体的には、安全圏の外側から塗り足しにかけて、無線綴じ冊子の場合は、「ノド」の部分に絵柄が一部重なるよう「かぶせ」部分を設けててください。詳しいやり方は 当社Webサイト「冊子商品のデータの作り方」のページでもご案内していますので、参考にしてください。

——CLIP STUDIO PAINT EXなら、見開きで描画したページをかぶせ幅指定で個別のページに書き出す機能がありますね。

冊子の“仕様”を固めておこう

——冊子印刷の注文・入稿の際に、間違いやすいポイントはありますか?

今村 多いのはページ数の間違いですね。当社では、本文の前にカラー口絵を追加する場合、ご注文フォームの「本文のページ数」にはカラー口絵を含めたページ数を入力する形になっています。カラー口絵をご注文の際はご注意いただきたいです。

  • 注文フォームの「ページ数」には、カラー口絵を含めた数を入力。この点は印刷会社によって異なる場合があるので、あらかじめ確認しましょう。表紙は左右の配置に注意。実際にプリントしたものを折って確認するのが確実です

今村 それと、右綴じか左綴じかによって、表紙/裏表紙の位置が逆になるので、この点もご注意いただきたいですね。

——テンプレートは同じでも、オモテ表紙になる方が違ってくるわけですね。注文時に間違えないよう、あらかじめ自分で作りたい冊子の仕様を書き出して、注意点をまとめておくのがよさそうですね。

今村 はい。最後に、納期のご確認も忘れずにお願いします。当社の場合、通常の納期に比べてイベントへの直接搬入ではプラス4日かかります。また、大型イベント前などでは短納期のご注文の受付を停止する場合もあるのでご注意ください。ぜひ早めのご注文・ご入稿にご協力をお願いいたします!  納期に関しましてはWebサイトの各商品ページ下部に「納期計算カレンダー」をご用意しておりますので、そちらをご確認ください。

——ありがとうございました。

では、最後にここまでのポイントをまとめてご紹介します。