ロジクールはトラックボール製品の上位機種「MX ERGO」の新モデルを9月24日に発売しました(MXシリーズではない通常のトラックボールマウス新製品「M575SP」は2024年9月19日に発売)。

前モデルとなるMX ERGOのレビュー記事で筆者は、「6年後にモデルチェンジするか?」と書きました。その答えが今回の新製品。MX ERGOシリーズとしては実に(6年を超え)7年ぶりのモデルチェンジとなりました。なおトラックボール製品としては2020年に、M575SPの前モデル「M575」が10年ぶりにモデルチェンジしています。

あまりにも気になったので今回MX ERGO Sの実機をお借りし、じっくり2カ月試してみました。

  • 2024年9月24日に販売したMX ERGO S(MXTB2)

ちなみに愛用していた前モデル「MX ERGO」はスイッチ不良を起こしてしまい(参考記事)、次いで購入した2台目も現在かなり劣化が進んでいます(こちらは外装の表面が劣化してえぐれ、ベースまで見えています)。

スイッチ不良の1台目は、スイッチの接点洗浄で復活したので、お出かけ環境で使う予備機になっていますが、今のところなんとか動作中。外側がかなり劣化しているものの、5年以上酷使しても十分毎日の利用に耐えています。電池持ちがよいこともあり電池の劣化も感じず、長く使えるいい製品だと思います。

  • 旧製品であるMX ERGO(MXTB1)。発売日(2017年9月22日)から愛用しています

  • 2台目のMX ERGO。滑り止めを兼ねたプラ部品は汗と熱で劣化しており、小指のかかる部分はベースのプラスチックがむき出しになっています……しかし動作にはさほど問題なしです

さて、筆者のロジクールトラックボールとの付き合いは大変長く、親指でボールを動かすタイプは「Cordless TrackMan Wheel」(ST-64UPi)が最初。この製品もコードレスですが、当時は27MhzのRF帯を使っていたため、スチールデスクでは電波が飛びにくくなるという難点を抱えていました。

そこで有線トラックボールの「TrackMan Wheel」(ST-65UPi)に乗り換えたのが2002年。2010年には2.4Ghz帯のUnifyingを使用し、さらにボールの移動検知方法を大きく変えた「M570」が登場。その後「MX ERGO」が、同社のトラックボール初の最上位サブブランドのMXの名称とエルゴノミクス性を引っ提げて2017年に現れました。

通常モデルのM575もエルゴノミクス性を加え、さらにカラバリを増やし2020年に登場。……その全てを使ってきた、というのがこれまでのザッとした歴史です。

  • ERGOという名前が示すようにエルゴノミクスデザインがMX ERGO Sの魅力です。従来通り0度の角度で使う設定のほか……

  • ちょっと小指側に力を入れるとカクっと20度傾いた状態に。大学との共同研究で、この場合が最も筋肉にストレスがかからないとされたそう

  • ボタンは通常の左右のほか、ホイールのチルト左右+押し込みと左ボタンの脇に進む/戻るボタン、そしてボールの脇にも親指用スイッチがあります。ホイールの下側にあるのは接続先を切り替えるもの

  • 本体の下にはスチール製のプレートがマグネットで付いており、この機構により角度を調節できます。裏には製品ロゴのほか、Logi Bolt・Bluetoothロゴが描かれました

トラックボールの利点とMX ERGOのよいところ

親指トラックボールの良さは省スペースで場所を選ばないところです。マウスの場合、パソコンの右(左利きの人は左)にある程度の移動スペースが必要。また例えばテーブルクロスの上やガラステーブルの上では動作しにくいマウスも多いです。

もちろんトラックボールも置く場所が必要ですが、マウスと違って移動しなくてよいので必要スペースは少なく、場合によってはキーボードのパームレストの上やひざの上でもよいのです。狭いスペースの機内や新幹線の中で作業するならマウスよりも絶対にトラックボールでしょう。

中でもMX ERGOシリーズの良さは主に2点。1つは新モデルに乗り換えても気にならないデザインで、右手にすっぽり収まったポジションで親指が自然とボールにかかり、人差し指と中指がマウスクリックに収まる構造は変わりません。

2つ目はMXシリーズゆえの高級感と先進性。黒基調のボディに加えて、手に収まる部分はラバーコートが滑り止めになっており、さらに20度傾けるという構造によって余計な力を必要としない(=使れにくい、長時間利用できる)という点です。

ロジクールはエルゴノミクス性に関して大学と共同研究を行っており、MX ERGOの発表会では試作のモックアップを何種類も展示していました。2台のパソコンをまたいで操作できる「Flow」機能も便利ですし、専用のレシーバー以外にBluetooth接続にも対応しているので、2台パソコンを持っている人には超便利です。

一方、ロジクールで最上位となるMXシリーズのマウスと比較するといくつかの見劣りもあります。クリック感あるスクロールと高速でホイールがなめらかに回り続けるスクロールが自動で切り変わる「MagSpeed Smartshift」や、最大3台の接続が切り替えられる「Easy Switch」機能はMX ERGOにはありません。

とはいえMX ERGOに惚れ込んで「No Trackball, No PC life」となっている筆者。新型のMX ERGO Sはどうでしょうか?