テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、17日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第44話「望月の夜」の視聴者分析をまとめた。
まひろ、何とも言えない居心地の悪さ
最も注目されたのは20時35分で、注目度79.8%。源倫子(黒木華)がまひろ(吉高由里子)を見つめるシーンだ。
太閤・藤原道長(柄本佑)の四女(倫子の三女)・藤原威子(佐月絵美)の中宮立后の儀のあと、穏座(おんのざ)が土御門殿で開かれた。雅楽に合わせて、道長の長男・藤原頼通と五男(倫子の次男)・藤原教通(姫子松柾)が舞を披露する。摂政を頼通に譲った道長は一門の栄華を噛みしめ、盃を傾けていた。2人の息子の凛々しい姿に多くの者が見惚れているようだ。母である倫子も、息子たちの舞と藤原北家御堂流の栄耀に酔いしれている。
倫子が生み入内を果たした3人の娘の姿もあった。長姉である太皇太后・藤原彰子(見上愛)は威厳に満ちた笑みを浮かべ、次女の皇太后・藤原妍子(倉沢杏菜)は相変わらず酒に溺れている。そして本日の主役である威子は硬い表情を崩さず、ひたすらに正面を見据えている。3人の娘たちには、それぞれ思うところがあるのだろう。
そんな彼女たちの気持ちも知らず、皇太后宮大夫となった藤原道綱(上地雄輔)は甥たちの晴れ姿を肴に、わが世の春とばかりに上機嫌でやっている。隣にいた大納言・藤原実資(ロバート・秋山竜次)ものんきな道綱にあきれている。宮の宣旨(小林きな子)ら彰子に仕える女房たちは、道長の脇に控えていた。遅れてきたまひろが、同僚である女房たちの座へ合流しようとすると、道長と視線が合った。まひろは一礼をし、再び歩を進めようとすると、道長の隣の席にいた倫子に目がとまった。倫子はまひろに視線を注いでいた。まひろは何とも言えない居心地の悪さを感じて頭を下げた。気がつくと頼通と教通は舞を終えていた。
「倫子さま、相変わらず笑い方が怖い」
注目された理由は、倫子がまひろに対して爆撃を開始するのではないかと、ひやひやした視聴者が画面に「くぎづけ」になったと考えられる。
前週「輝きののちに」では、道長に対して倫子は「私は殿に愛されてはいない」と、これまでの思いを告白したが、その内容と「ふふふふ…」という、余裕に満ちた笑い声に多くの視聴者が戦慄した。以前から、名探偵・倫子はまひろと道長の関係に気づいており、「まひとも戦争」がいつ勃発するのかと視聴者の間でも話題となっていたが、『光る君へ』も今回で44話。先週の展開も鑑みて、そろそろ頃合いだと感じた視聴者は多かったのではないだろうか。今回の前半でも倫子はまひろに、道長の伝記の執筆を依頼しており、2人のただならぬ関係を把握しているとしか思えない描写もあった。また、『光る君へ』は、放送時間の終盤にインパクトのある事件が発生するパターンが多く、その点も承知した視聴者がイベントの発生を期待した面もあると考えられる。
X(Twitter)には、「倫子さま、相変わらず笑い方が怖い。声は無いのに」「倫子さまは何も語らないけれど、どう考えてもまひろと道長の関係を察しているよね」「道長を挟んでまひろと倫子さまが並ぶと冷たいものを感じるな」「倫子さま開き直ったからかな、貫禄がすごい」などと、腹の見えない倫子に底知れぬ恐怖を感じた視聴者からのコメントが多数集まった。結局、今回は倫子による爆弾投下はなく、セリフもない一瞬の表情による演技で多くの視聴者を恐怖に陥れた倫子の存在感には目を見張るものがある。
『紫式部日記』には1008(寛弘5)年、「菊の着せ綿」を倫子が紫式部に贈ったというエピソードがある。「菊の着せ綿」は菊の香りや露を綿に染み込ませたものであり、アンチエイジング効果があるとされていた。当時は非常に高価なものであり、そんな貴重な品を贈るということは2人はかなり親しい仲だったのだろう。この年といえば、敦成親王が誕生した年。娘である彰子が皇子を生むきっかけを作った功労者である紫式部に、お礼として贈ったものだったのだろうか。