――久々のフジテレビのドラマで刑事役となると、先ほどもタイトルが出ましたが、『踊る大捜査線』を思い出さずにはいられません。

確かに思い入れはありますよ。覚えてることはいくつもあるし、すごく大事なものではあるけど、今を生きてるわけなんで、あんまりそれを前に振りかざしてやるっていうのは、みっともないなと思ってね。あれはあれでもう僕の大ラッキーな、すごく大事な仕事だったし、『踊る』をやってたフジテレビのドラマに出るっていうので思うところはありますけど、あんまりそこに立ち止まっていたくないっていう感じですね。

――今年でデビューからちょうど30年になります。改めてこれまでの活動を振り返ってみて、いかがでしょうか。

最初はもう本当にイケイケで怖いものが全くなかったんですよ。世間の人間は誰も自分のことを知らないっていうのが原動力になって、「どうせ俺のことなんか知らねぇだろ! めちゃくちゃやってもいいよな!」みたいな感じで、楽しかったですね。

――芸名も含めて(笑)

「俺の名前めちゃくちゃだろ? 他人に付けられたんだよ!」みたいなこと言いながら始まって、結構早い段階から仕事が増えてきたんで、すごくいいスタートでしたね。

それから30年やってるってことは、それだけ年取ったってことで、そんときのようなフレッシュな気持ちではもちろんできないけど、今の年だからできる役もありますから。若さだけが求められてたら、年取ったら全ての人が終わりってことになっちゃうから。この仕事って定年もないし、元気だったらいつまでもできる仕事だけど、オファーがなかったら無職だと思ってやってるんですよ。

できる役が少なくなってもプラス思考「いい方向に向かう力に」

――今回で演じる「ノンキャリのたたき上げ刑事」は、今だからこそできる役ということですね。

ちょっと疲れてる感じの芝居なんか一切してないんだけど、何もしなくても枯れた感じが出てきますから(笑)。やれる役はすごく少なくなったと思うけど、だからダメってことでもないし、ありすぎても困りますから。例えば、ベジタリアンの人って「今日の夕飯何にしよう?」ってそんなに悩まないと思うんです。物件探してて30軒出されても迷っちゃう。そういう感覚ですね。

――年齢を重ねたことのプラスな捉え方が、ユースケさんらしいなと思います。

「老けたな」とか「体力落ちたな」とか、そっちのほうで考え出すと暗たんたる気持ちになっちゃうじゃないですか。ちょっと気を許したらそっちにいきそうになっちゃうから、それをいい方向に向かう力に変えて、何とか回していきたいなと思ってますよ。

――それは先ほどお話しいただいた「ムードメーカーになる」という考え方にもつながりますか?

こういう立ち位置って若いやつがやると思ってたから、「俺はいつまでやってるんだろう?」っていうのはありますけどね(笑)。この現場で言うと、小日向(文世)さんがいなかったら僕が圧倒的最年長ですから、普通はどっしりといるもんじゃないですか。だけど若い子から、そんなに上だと思われてないのかもしれないです。

『踊る』が始まった時は一番若手でペーペー中のペーペーでしたから、みんなが本当に良くしてくれて、すごく楽しかったんですよ。僕も後輩キャラで先輩の懐に滑り込むのが得意でしたし。今、自分がその先輩たち年齢になったというのが信じられないですけど、僕の中では年齢に見合った落ち着きがなくてもいいのかな、と思いながらやってますね。

●ユースケ・サンタマリア
1971年生まれ、大分県出身。94年にラテンロックバンド・BINGO BONGOとしてデビューし、解散後の97年にドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ)に出演。近年では、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)、『オー!マイ・ボス! 恋は別冊で』(TBS)、『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』(日本テレビ)、、大河ドラマ『麒麟がくる』『光る君へ』(NHK)、『沈黙の艦隊 シーズン1~東京大海戦~』(Amazon Prime Video)などのドラマのほか、『ナゼそこ?』(テレビ東京)では番組MCも務める。現在放送中のドラマ『全領域異常解決室』で、9年ぶりにフジテレビ制作の連続ドラマに出演。