2番目に注目されたのは20時33分で、注目度79.5%。まひろの娘・藤原賢子の裳着のシーンだ。
賢子の帯を、叔父の藤原惟規が締める。いと、乙丸(矢部太郎)、きぬ(蔵下穂波)たちも緊張した面持ちでその様子を見守っている。賢子はまひろ、為時、惟規に向き直り、ゆっくりと頭を下げた。「ありがとうございました」賢子の裳着の儀がつつがなく執り行われると、まひろは惟規にあらためて礼を言った。「これでお前も一人前だ。婿も取れるし、子も産める」と、惟規はいましがた大人となった姪にさっそく軽口を投げかけるが、うっすらと笑みを浮かべ、「重とうございます」と返す賢子の表情は、まさに大人の女性のものだった。「ふふ…」まひろは成長した娘の姿を見て、思うところがある。
「今日までお育てくださって、ありがとうございました。おじじ様のご恩は、忘れませぬ」賢子はまひろには見向きもせず、祖父の為時に頭を下げた。まひろの心境は複雑だ。「はぁ…じじを泣かすようなことを言うな」為時が感慨深げにつぶやくと、「賢子は、まことに越後には行かぬのか?」と、惟規は尋ねた。「はい。もう一人前ですゆえ、いとと、乙丸ときぬとこの家を守ります」賢子は祖父の新たな任地である越後には行くつもりがないらしい。「女房となって、藤壺に上がるのが嫌なのですって」まひろが言った。
「宮仕えをしたら、高貴な男たちがよりどりみどりだぞ」軽い調子の惟規に、「宮仕えはいたしませぬ。母上と同じ道を行きたくはございませぬ」と、賢子はにこやかに、しかしきっぱりと返した。「頑固なところは、まひろによく似ておる」為時が娘と孫を見比べると、惟規は吹き出したが、賢子は面白くなさそうにふてくされた。
南沙良が登場「成長著しい!」
このシーンは、初登場を果たした南沙良と、道長(柄本佑)の用意した華やかな衣装に視聴者の注目が集まったと考えられる。
前回までの賢子は梨里花が演じていたが、今回の裳着のタイミングに合わせ、南が役を引き継いだ。美しい大人(まだ10代になったところだが)の女性に成長した賢子に、ネットでは「賢子の裳着、美しい!」「美人になって…!」「賢子ちゃん、成長著しい!」と、大いに盛り上がりを見せている。また、賢子の美しさを際立たせた衣装は、さすが時の最高権力者が用意したものだけあって、そのラグジュアリー感はすさまじいものがあった。母であるまひろの裳着のシーンを思い出す視聴者も多く、「衣装が重いってまひろも言ってたね」「賢子ちゃんの裳着のアングルが第2回のまひろの時と同じだったのが最高」といったコメントも寄せられている。
裳着の儀を無事に終えた賢子は、祖父・為時や叔父・惟規には笑顔を向け、感謝を伝えたが、母であるまひろに顔を向けることはなかった。まひろが裳着をむかえた時期は、母であるちやは(国仲涼子)が藤原道兼(玉置玲央)に斬り殺された事件をきっかけに、父・為時との関係が最悪だったが、ぎくしゃくした親子関係まで、母の時と同じになってしまった賢子の裳着の儀は、様々な意味を持つ名シーンとなったと言えるのではないだろうか。
今回、初登場を果たした南沙良はレプロエンタテインメントに所属する神奈川県出身の22歳。大河ドラマの出演は2022年の『鎌倉殿の13人』に続いて2度目。『鎌倉殿の13人』では、「おんたらくそわか」で大きな話題となった悲劇の姫、大姫を演じたが、作中で「紫式部」というセリフを残している。2022年のこの時にはすでに『光る君へ』への出演が決まっていたのかもしれない。南の賢子役のキャスティングが発表されたときは、2年越しの伏線回収が話題となったことも記憶に新しい。