オリジナルのコンビを組むというシステムには、芸人特有のエモーショナルな要素を期待した。

「芸人さんの“あの人とネタをやってみたかった”という話って、聞いてみるとめちゃくちゃ面白いんですよ。高比良くるま(令和ロマン ※高ははしご高)&野田クリスタル(マヂカルラブリー)という2人は、LINEの連絡先も知らないほどプライベートで仲が良いわけではないけど、“あの人とやったらすごく面白くなるんじゃないか”という感覚って、僕らでは分からないけど芸人さんは誰しもが持っているものなんですよね。それに、指名した人もされた人も責任を感じることで、またそこに熱量が生まれる仕掛けになっています」

スタジオにコンビが登場する前には、「僕とゴールデンコンビを組んでください」と申し出てコンビが誕生する瞬間を含めた紹介VTRを流すことで、「演者さんに気持ちを入れてもらおうと思いました。そして観覧客や視聴者にも、どのコンビを推すか決めてもらいたいのですが、進んでいくうちに“こっちのほうが面白いかも”といったいろんな感情が生まれると思うので、そうやった深い楽しみ方をしてもらいたいと思います」と狙っている。

『IPPON』『ENGEI』デザイナーが手がけた総額1億円のスタジオセット

熱量を引き出すもう一つの要素としてこだわったのが、スタジオセット。今回は『IPPONグランプリ』『ENGEIグランドスラム』(フジテレビ)など、数々の鮮烈なセットをデザインしてきたフジアールの鈴木賢太氏に依頼した。総額1億円をかけて製作したそうで、「賢太さんがデザインしてくれた巨大なLEDとセットで、ムチャぶりの即興コントをやるということのギャップも、面白く出るのかなと思いました」と期待を込めた。

橋本氏がフリーになり、今までライバル関係でありながらも、「この人と組みたい」と思っていたテレビ業界のクリエイターたちとの“ドリームチーム”を集結して、新しい配信番組に挑むという構図だ。

その中で感じたテレビ番組制作との違いは、1つの企画にかける準備期間の長さ。

「テレビのレギュラー番組だと、立ち上げから2か月くらいで収録して、作りながら手応えを持って改良していくという感じですが、セットやLEDといった美術や、とんでもない数のカメラをどこに置くのかとか、全部詰めに詰めてから収録するというやり方は経験がなかったので、めちゃくちゃ勉強になりました」

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芸人たちの反応は「胃が痛くなる仕事ですね」

この新たな賞レースのオファーを受けた出場者たちの最初の反応を聞くと、「皆さん“やってやりましょう!”みたいなテンションではなく、短い時間で即興ネタを作り上げなきゃいけないこと、セットがせり上がってきて何をするのかが分かること、お客さんの前で披露することとかも含めて、“胃が痛くなる仕事ですね”とポジティブな評価ではなかったです(笑)。『有吉の壁』の収録の合間に“プレッシャーですね”と言われることもありました」とのこと。

そこで大きな役割を果たしたのが、MCの千鳥だ。がっつり仕事をするのは今回が初めてだったという橋本氏は「オープニングのトークでノブさんが“この巨大セットはYOASOBIが歌うところやから”、大悟さんが“『チャンスの時間』(ABEMA)やと思ってやってくれたらいいから”と言って、お客さんも巻き込んでハードルを下げてくれて、改めてお願いして良かったなと思いました」と感謝。千鳥とも4回ほど打ち合わせを行い、プレイヤー目線のアドバイスをもらいながらブラッシュアップしていった。