関東地区では平日午後に今月1日から9日まで再放送され、連日X(Twitter)にコメントがあがっていたドラマ『ビーチボーイズ』(97年、フジテレビ ※FODで配信中)。ただ、「仕事や学校で見られなかった」という人は多いのではないか。
ネット上には「なぜ今、27年前放送の『ビーチボーイズ』?」「なぜ夏ではなく10月の再放送なのか?」という声があがっていたが、これは8日スタートの反町隆史・杉野遥亮主演ドラマ『オクラ~迷宮入り事件捜査~』の番宣を狙った再放送。さらに、同じ亀山千広プロデューサーが手がけた11日公開の映画『室井慎次 敗れざる者』のPRという側面もあるのだろう。
とはいえ、あらためて見てみると、『ビーチボーイズ』は10月に見ても違和感はなく、27年前の作品でも全く古さを感じさせないドラマだった。もう1つ付け加えるならば、同作は決して「単なるイケメンと海のドラマ」ではない脚本・演出のクオリティがある。そんな『ビーチボーイズ』をドラマ解説者・木村隆志が掘り下げ、今見る必然性をあげていく。
海が舞台でも恋愛ドラマではない
反町隆史 with Richie Samboraの主題歌「Forever」が流れるオープニングは、圧倒的なイケメン+海。反町隆史と竹野内豊が美しい海に飛び込んで泳ぎ、シャツを脱いで上半身裸でビーチを歩く……その姿はただただカッコイイ。現在の10代・20代が見ても文句なしのイケメンではないか。
さらに同作は、海辺のさびれた民宿「ダイヤモンドヘッド」が舞台の物語だけに、海や青空の開放的な映像が満載。水着の海水浴客、浴衣のヒロインたち、ビーチバレー、バーベキュー、花火、五右衛門風呂、砂浜で作った城などの楽しげな映像も多く、これほど「夏ド真ん中」の作品はないだろう。実際、同作は放送以来、好きな夏ドラマを尋ねるアンケートで常にトップクラスをキープしている。
特筆すべきは、海辺が舞台のドラマでありながら、ラブストーリーを選ばなかったこと。例えば同じ月9ドラマでも、2016年の『好きな人がいること』、2023年の『真夏のシンデレラ』は、どちらも海辺のラブストーリーだった。
海というロケーションだからこそ「ひと夏の恋」「運命の出会い」を前面に押し出したくなるところだが、制作サイドが選んだのは「男同士の友情」「傷ついた人々の再生」。放送された1997年当時はまだ「月9=ラブストーリー」というイメージの人が多い中、「新しい夏ドラマを作る」という攻めの制作姿勢を感じさせられた。
そして結果的に、夏ではなく一年を通して引きつけられる作品になったのは、脚本家・岡田惠和が手がける等身大の人間ドラマによるところが大きい。同作は終盤まで大きな出来事が起きない一方で、登場人物の一人ひとりに共感を誘う物語があった。