日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント‘24』(毎週日曜24:55~)で、きょう6日に放送される『キティちゃんと王さまの約束~鉛筆1本から描く平和~』(山梨放送制作)。ハローキティをはじめとするサンリオのキャラクターたちに反戦の思いを込めた同社の創業者で名誉会長の辻信太郎氏(96)(※「辻」のしんにょうの点は1つ)に密着した作品だ。
取材したのは、山梨放送の渡辺浩人ディレクター。普段は穏やかな人柄でありながら、戦争の話になると口調が変わる辻氏に、「みんななかよく」という理念への強い思いを感じたという――。
「戦争が終わったら、人と人とが仲良くなるための仕事を」
レディーガガやブルーノマーズといった海外の大物アーティストもファンを公言するなど、世界中で愛されるハローキティ。その根源には、辻氏が戦時中に抱いた「戦争が終わったら、人と人とが仲良くなるための仕事をしよう」という思いがあった。
それは「みんななかよく」という企業理念に表れており、辻氏は、サンリオがキャラクタービジネスだけを手がける企業ではなく、「コミュニケーションの会社なんです」と強調する。
渡辺Dが辻氏を取材するきっかけになったのは、ニュース番組での終戦特集。取材対象をリサーチする中でたどり着いたのが、辻氏が毎年8月に反戦への思いをつづる「いちご新聞」だった。
しかし、辻氏はほとんどテレビ取材を受けない人物。ダメ元でサンリオに取材を依頼すると、出身地である山梨のテレビ局であること、そして戦争の話を後世に広めたいという思いで快諾してくれた。
偶然出会った人に「知り合いになろうよ」
サンリオを一代で世界に知られる企業に育て上げたカリスマ経営者であり、前述の通り普段は取材を受けないというだけに、近寄りがたい人柄かと思いきや、番組で伝わってくる印象はまるで正反対だ。
「全然偉そうでなく、本当に優しい方なんです。驚いたのは、最初の取材でサンリオ側から“社内のパーティーで辻さんがハーモニカを吹くので来ますか?”と誘われたので行ってみたら、社員の皆さんが手作りのうちわで応援していて、そのアイドルのような人気ぶりに衝撃を受けました。創業者、上司としてだけでなく、人としても本当に慕われているんだと思いました」(渡辺D、以下同)
こうした様子を目の当たりにして、「30分の番組で、もちろん戦争のことも描きながら、社員の皆さんと同じように視聴者も辻さんのことを好きになってもらえるように描きたい」という決意のもと、本格的に密着がスタートした。
そんな辻氏の生き方を最も感じた場面は、カメラを回していない瞬間にあった。インタビュー取材のために借りた会場のオーナーに、「知り合いになろうよ」と自然に声をかける姿を目撃。「その日に初めて偶然出会った人にあの言葉が出ることがすごいですし、そうやってこれまで生きてこられたんだなと伝わってきました」と驚きを振り返る。
番組内では、辻氏が様々な人にプレゼントを渡す場面が登場。「普通なら大きな会社の創業者からプレゼントを渡して“仲良くしよう”と言ったら違和感がありそうですが、辻さんはそれを伝えることが当たり前で大切なことなんだというのを体現されていて、心に来るものがありました」と感銘を受けたそうだ。