乗務員室は運転台と車掌台にそれぞれ締切用の開戸を設け、他編成との併結時に通路以外を閉鎖できる構造に。主幹制御器は力行・抑速およびブレーキが独立した2ハンドルのデスクタイプで、計器(速度計・圧力計など)やモニタ情報表示器は集約してLCD表示とした。

  • 主幹制御器は2ハンドルのデスクタイプ。計器とモニタ情報表示器は集約してLCD表示に

運転操作時に必要なスイッチ類は運転席の周囲に配置して操作性に配慮する一方、運転操作に必要のない機器はケーシング内に収納している。故障発生時のバックアップとして、モニタシステムから運転に必要な最低限の情報を取り込み、ディスプレイ故障時は情報表示器画面でもメータ情報を簡易表示できるようにしているという。

運転士用腰掛は座面の高さおよび前後方向の調整に加え、背ずり単体での前後調整と4段階の角度調整機能を設け、さまざまな体格や身長に合わせられるよう配慮した。運客仕切扉のカーテンは電動のものを採用し、運転士が手もとのスイッチで操作できる。

情報伝達装置(モニタ装置)に関して、乗務員室に制御装置とタッチパネル式情報表示器を備え、乗務員支援機能(行先・時刻など運用情報、故障情報、次駅停車予告、出庫点検支援)、メンテナンス支援機能(検査、試験機能、故障状態記録確認)、サービス機器制御機能(空調、各種表示、電灯、放送制御機能)という3つの機能に大きく分けられるとのこと。基幹伝送はアークネットだが、車内表示器の動画やカメラ映像など大容量のデータ通信も必要となるため、編成内でイーサネットのネットワークも併用している。

8A系の設計最高速度は120km/h、運転最高速度は110km/h。加速度は3.0km/h/s、減速度は4.0km/h/s。ブレーキ性能に関して、既存車両と比べて電制可能な速度領域を停止間際まで拡大したほか、運用線区に35パーミル前後の連続勾配があるため、抑速回生ブレーキを備えた。主制御装置はVVVFインバータ方式で、1C4M制御の主制御器をM車・Mc車に搭載。低損失のハイブリッドSiC素子を採用した電圧形PWM2レベルインバータとなっている。主電動機も低損失化を図り、全閉自冷式かご形三相誘導電動機を採用した。

補助電源装置として、容量190kVAの静止型インバータ装置をTc車に搭載。主回路素子にIGBTを使用した3レベルインバータ方式を採用し、小型軽量化、高効率化、低騒音化を実現している。電動空気圧縮装置もTc車に搭載され、オイルフリースクロール式で容量1,155リットル/min。周辺機器であるアフタークーラ、除湿装置、起動装置など1つにパッケージングして省スペース化を図り、装置内の圧縮機ユニットを3台搭載することで冗長性を持たせた。

台車は走行性能の向上、軽量化、省メンテナンス化を図ったボルスタレス台車(M台車 : KD-327 / T台車 : KD-327A)で、「ひのとり」(80000系)をベースに荷重条件など見直している。連結装置は先頭部に密着連結器、中間部に半永久連結器を採用。なお、先頭部に60点と36点の電気連結器を装備しているとのことだった。

  • ボルスタレス台車で軽量化、省メンテナンス化を図った

  • Tc車・T車の台車は近畿車輛の「KD-327A」

新型一般車両8A系は、2024年度に計48両(4両編成×12編成)を予定しており、整備が完了し次第、順次導入していく。報道関係者向け内覧会が行われた9月20日の時点で、3編成を搬入済みと説明があったという。2025年度も計36両(4両編成×9編成)の導入を予定している。

同車両の開発コンセプトは「ご利用いただくあらゆる方々により身近に、親しみをもっていただける車両」。多様化するニーズに応じ、「特に子育て世代に近鉄沿線に住もうというきっかけになる車両として送り出した」と説明している。この車両が沿線ブランドの価値向上に貢献し、将来にわたって親しまれる車両となることを期待したい。

新型一般車両8A系の主要諸元

  • 車両形式(奈良寄→大阪寄) : ク8A1(制御車・Tc) / モ8A2(電動車・M) / サ8A3(付随車・T) / モ8A4(制御電動車・Mc)
  • 車両番号(奈良寄→大阪寄) : 8A101~8A112 / 8A201~8A212 / 8A301~8A312 / 8A401~8A412
  • 電気方式 : 直流1,500V 架空線式
  • 設計最高速度 : 120km/h
  • 運転最高速度 : 110km/h
  • 車両性能 : 加速度3.0km/h/s・減速度4.0km/h/s
  • 主電動機(M・Mc) : 全閉式かご形三相誘導電動機 MB-5183A2 240kW×4台
  • 駆動方式 : 平行カルダン式(WN方式)
  • 歯車比 : 6.31
  • 制御装置(M・Mc) : VVVFインバータ制御式 MAP-244-15V368(1C4M制御-ハイブリッドSiC素子)
  • 補助電源装置(Tc) : 静止インバータ式 SVH190D3A-4111A(待機2重型) AC440V-190kVA
  • ブレーキ装置 : 電気指令式空気ブレーキ装置 KEBS-21A(停止および抑速回生ブレーキ、応荷重機能、制御圧切換機能、滑走防止装置、保安ブレーキ付)
  • 電動空気圧縮機(Tc) : 交流型オイルフリースクロール式 URC1200SD-I 1,155リットル/min
  • 空調装置 : ユニット型 CU7042 ロールフィルタ内に空間除菌装置(深紫外線LEDユニット)搭載 47,000kcal 54.66kW(6kWヒータ内臓)×1台
  • 暖房装置 : シーズワイヤヒータ 12.0kW
  • パンタグラフ(M・Mc) : シングルアーム型 PT7605-A×1台
  • 戸閉装置 : 空気式ドアエンジン両引戸(戸閉弱め機能、扉個別開閉機能、扉再開閉機能)
  • 保安装置 : ATS・列車無線・列選装置
  • 蓄電池(Tc) : DC100V-80AH
  • 行先モニタ装置 : 情報伝送装置、セレクトカラー式LED式行先表示装置、LCD式車内案内表示装置
  • 車内灯 : 直管反射型LED式客室灯

(報道関係者向け内覧会で配布されたパンフレット等をもとに作成)