これまで、『セブンルール』(カンテレ)や『WBS』(テレビ東京)といった番組からも特集されてきた三姉妹だが、今回は「彼女たちの明るさだけでなく、葛藤する部分が見えたらいいなと意識しました。また、家族経営というのは難しいのではないかと想像していたので、そこもちゃんと描きたいと思いました」と差別化。それを象徴する存在が、美保さんだ。
「私と年齢も近くてお話する機会が多かったのですが、初めて親族ではない人を従業員に迎えたり、2号店を考えたりと過渡期の中で、社長としての悩みを聞く機会が結構ありました。“お店を成長させなきゃ”という思いが強い中で、お子さんを妊娠して、すごくうれしいことなんだけど、自分が頑張れないというところに、いろんな葛藤があるんだと伝わってきました」
妹たちについても、「由美さんは小学生の男の子2人を育てながらフルタイムで働いて、さらに朝4時から資格の勉強もしているんです。家ではちゃんとお母さんでありつつ、仕事にも手を抜かず、プライベートも諦めないところがあって、すごくパワフルで憧れる人も多いと思います。美香さんも、天真らんまんでありながら次のステップを考えて資格の勉強をしているんです」と、店では見せない顔を目撃。
家族経営の酒屋という特殊な事例ではあるものの、「仕事に向き合っている人でしたら、皆さんとても共感できると思います」と見どころを語った。
「自分が本当にやりたい番組は何だろう」と退社を決断
以前は制作会社に所属し、『ザ・ノンフィクション』では、『ママにしてくれてありがとう~血のつながらない母娘の12年~』(21年6月20日放送)、『「おかえり」の声が聞きたくて ~歌舞伎町 真夜中の処方箋~』(21年11月7日放送)、『私がつながりたいもの ~スマホがないと生きられない時代~』(23年10月1日放送)などの制作に携わってきた牧野D。
「とてもありがたいことに、30代後半に入って自分が次の段階に進めるように、いろいろ仕事を振ってもらえるようになったのですが、“自分が本当にやりたい番組は何だろう”と考えることが多くなって、中途半端な気持ちで仕事をやり続けるのはお互いにとってよくないと思い、会社を辞めました」と、『ザ・ノンフィクション』を作り続けるためにフリーに転向した。
そこまでして制作したい『ザ・ノンフィクション』の魅力を聞くと、「普段、何気なく生活している中では、出会えなかったかもしれない人たちの生き方を知ることができるところかなと思います」と回答。
さらに、「長期間の取材を通して、少しずつお互いに距離が縮まって、取材先の人にいいことがあったら、自分も一緒にうれしくなったり、つらいことがあったら、一緒に悲しくなったりと自分自身の感情も揺れ動いて、その気持ちを形にして、多くの人に知ってもらえることができるところも好きです」とも明かした。
こうした経緯での独立後、今回が初めての制作番組となるだけに、三姉妹の仕事に向き合う姿勢に共感する部分もあったようだ。
「今回、取材交渉するときに、なぜ自分が会社を辞めて覚悟を決めて、最初に三益酒店さんを取材したいのかという思いを、何度も通ってお話ししました。それこそ、三姉妹はお酒を仕入れるために、蔵元に何回も通っているんですよ。そうした思いは共通する部分なのかもしれないです」