水谷豊の優しさに感動
――主演の水谷豊さんと、言葉は交わしましたか。
カツラをつけているときに水谷さんが来て、「狩野ちゃん、よろしく」とグータッチしてくれました。大御所の俳優さんが、僕にまでこんなことをしてくださるんだとうれしかったです。最終日にも、衣装のまま映画セットの前で一人で記念撮影をしていたら、通りかかった水谷さんがトコトコっと隣に来て、「一緒に撮ろう!」と言ってくださって、優しさに感動しました。
――水谷さんや檀れいさんとの共演で感じたことがあれば教えてください。
僕の一番最初の撮影シーンが、水谷さんとの掛け合いだったんです。家で一人でたくさん練習して、マネージャーさんに水谷さんの台詞を読んでもらったりして臨みましたが、練習しすぎがあだになったのか、テストから台詞についつい力が入りすぎてしまって。でも水谷さんが落ち着いたお芝居でその場面のテンションを先導してくれたから、僕も調整することができました。水谷さんの一つひとつの台詞回しが共演者を調和させて、すべてのシーンを心地よくつなげているんだなと、素人ながらに感じました。
檀さんのお芝居もすごかったです。悪人の僕に向けた目つきには、「僕、本当に悪いことしちゃったな、申し訳ないな」という気持ちにさせられて。気になって視線を返すと、フンッと目をそらされたのですが、そんなやりとりは台詞やト書きにはないんです。台本に書かれてないお芝居までできる役者さんってすごいなと勉強になりました。
芝居仕事は「思い出作り」ではできない
――今年、狩野さんはミュージカルにも挑戦されましたが、お芝居への印象を教えてください。
お芝居は、精神的にも体力的にもすごく大変です。でも、ミュージカルの千秋楽でも、今回のクランクアップでも、「終わっちゃったんだ」という寂しさが一番に来ました。今回も、京都行きの新幹線のなかで「あのシーンどうしようかな」「水谷さんはどんなお芝居をするかな、こう来たらどう対応しようかな」とずっと作品のことばかり考えていたので、終わったときは寂しかったです。
――オンエアが迫っていますが、反響は楽しみですか。
「何であいつを出したんだ」という声があるかもしれないので怖いですが(笑)、自分なりに一生懸命、全力でやらせていただいた結果なので、賛否を受け止めようと思います。反響次第で、またやりたいなという気持ちが強くなるかもしれません。
――これからもお芝居を積極的にやっていきたいですか。
お芝居を経験して、役者さんたちへのリスペクトの思いがすごく大きくなりました。だからこそ、「思い出作りで」とか、「スケジュールが空いてるから」という理由ではできないと思っています。やるからには、バラエティのお仕事を断って、時間を空けて、全力で向き合わないと、役者さんやスタッフさんたちに申し訳ない。それくらい、現場で皆さんの本気を見てきたので。またやりたい気持ちはありますが、そのときはしっかりと会社と相談して挑戦したいです。
――お芝居を経験して良かったと思うことを教えてください。
俳優の世界に飛び込んで戦えたことで、度胸がつきました。あとは、母親も親戚も今作のオンエアを非常に楽しみにしてくれているので、親孝行ができたのかなと。
――では最後に、『無用庵隠居修行8』狩野さんの注目ポイントを教えてください。
『ロンドンハーツ』では騙される一方の僕が、水谷さんたちを騙す詐欺師に挑戦しました。騙したあとの、(田村)淳さんのようなニヤッとした笑いに注目してほしいです!
直木賞作家・海老沢泰久原作の短編時代小説『無用庵隠居修行』を、時代劇『だましゑ歌麿』の水谷豊×吉川一義監督のコンビでドラマ化したシリーズの第8弾。今作では水谷豊、岸部一徳、檀れいのほか、半兵衛の悪行退治に力を貸す元御庭番衆・藤兵衛に田山涼成、半兵衛なじみの料亭女将のお咲に中山忍、半兵衛の息子で目付・日向新太郎に田中偉登、その妻・おふみに松風理咲、奈津の母・郁に市毛良枝、半兵衛の理解者でもある火付盗賊改・長谷川平蔵に榎木孝明、半兵衛を高く評価している老中・松平定信に杉本哲太など、レギュラーキャストが今回も集結。さらにゲストとして、菅原大吉、勝村政信、金子貴俊、火野正平、梶原善、内田慈らが出演。水茶屋店主役の小川菜摘、半兵衛らが面倒を見る小川村の農民・おせき役の橋本マナミもそろって華を添える。そして、東北地方から江戸に出てきたインチキ修理屋・弥吉役で宮城県出身の狩野英孝が出演する