• ゆりやんレトリィバァ

長きにわたる肉体改造とプロレス練習を経てクランクイン。衣装もメイクも、そしてセットも見事に80年代が再現され、「私は90年生まれなので80年代の雰囲気は実体験してないですが、当時にタイムスリップしたような気持ちになりました」とゆりやんは振り返る。

ダンプと長与の壮絶な「敗者髪切りデスマッチ」など、観客役として大勢のエキストラも参加した試合シーンは、特に印象に残っているという。

「本当に信じられない時間で、不思議な体験をしました。ベテランの俳優さんも『その時代にダンプさんの試合を見ているようで、こんな体験は初めてです』とおっしゃっていて。それぞれが役になり切っていたというより、全員がその時代に魂だけタイムスリップしたような感覚になって、一体感がすごかったです。ダンプさんも長与さんも『当時のままだ』とおっしゃってくれて、本当に不思議な世界をみんなで体験できてうれしったです」

2022年10月にはゆりやんが演技中に背中と頭を打ち、医者の診断を受けたところ大事をみて2週間の安静の指示を受け、それに伴い撮影が一部延期となった。

この件について、ゆりやんは「ケガについて『動けない状態』という記事が出たこともありましたが、普通に買い物に行っていましたし、大げさに盛られていました」と当時の状況を説明。「安全に配慮してやっていただいていたんですけど、私が受け身をうまくとれなかったというだけで。人の命もケガも容赦ない過酷な現場だと思われるのが悔しくて、そうではなく、熱い現場でしたが安全な現場だったということはお伝えしたいです」と語った。

撮影中断を経て、再集結したキャスト・スタッフが魂を込めて作り上げた本作。当時の熱狂、そして知られざる裏側のドラマを見事に表現した。

「『極悪女王』に出られて本当によかった」と心の底から感じているゆりやん。「もしこの作品に出させてもらってなかったら、私の人生はどうなっていたんだろうと。そんな人生は信じられないというほど、すべての人生観が変わったというか、アップデートされたというか、本当に感謝しかないです」と語る。

人生観がどのように変わったのか尋ねると、「1人ではできないことが、同じ目標に向かって頑張る仲間がいたら頑張れるんだと身をもって感じましたし、お芝居にこんなに長い期間参加させてもらうことがなかったので、俳優の皆さんの役作りやお芝居に対する姿勢を目の当たりにできたことが大きかったです。監督や各セクションのプロの方たちのお仕事を見てモノ作りへの熱量やお互いへの尊敬を感じられたことも大きく、貴重な体験になりました。この作品に関わった皆さんと出会えて感謝しています」と答えた。

日本中を熱狂させたダンプや長与らを知り、その人物を演じられたことにも感謝しているという。

「こんなにも日本を熱狂させた方々のことをちゃんと知ることができたこともうれしかったですし、そんな偉大な方を演じさせてもらい、私が生まれる前に起きていた当時の熱狂を体験できたことも感謝しています。撮影が終わってダンプさんに『ありがとうございました』と連絡したときに『ゆりやんにやってもらって良かったよ』と言っていただけて、本当にうれしかったです。うれしかったことやすごかったことが多すぎて、もしこの作品に出演させてもらっていなかったら、めっちゃ薄っぺらい人生になっていたんじゃないかと思うくらい厚みがすごかったです」

また、ダンプ役を通じて「お芝居のやりがいを非常に感じました」と言い、「自分の殻を破れた」とも語る。

「今まで出したことのなかった感情をさらけ出すことができるようになったのは非常に財産になりましたし、自信になったと思います。ただ、本当に1人ではできなかったことだなと感じていて、撮影はもちろん、体作りやメンタル的なところも、1人だったらくじけてしまうところを皆さんにサポートしてもらってできたので、本当に感謝していますし、人のありがたみをものすごく感じました」