小学生のときにスカウトされ、ファッション誌『ニコ☆プチ』(新潮社)専属モデルとして活躍し、近年は俳優としての評価を高めている桃果。昨年公開された映画『唄う六人の女』での「見つめる女」の好演も記憶に新しい。
その桃果の最新出演映画『マンガ家、堀マモル』が8月30日より公開されている。新人賞受賞後、スランプに陥っている漫画家・堀マモル(山下幸輝)が、3人の幽霊と遭遇し、自分自身を見つめていく本作。桃果は、物語のキーパーソンとなる、マモルの幼なじみで大切な存在の春を演じている。
実は桃果は、本作が具体的に動き出す以前より、武桜子監督や、原作・主題歌のsetaと、「一緒になにか作ろう」と話をしていたそう。フリーランスになってから、「作る側」の話もよく聞くようになったという彼女に、子どもの頃から長く続けてきた芸能活動への向き合い方の変化や、今も心に残る先輩からの言葉などを聞いた。
長編映画としての劇場公開に驚き
――マモルの大切な人、春を演じましたが、どのような形で参加されたのでしょうか。
『マンガ家、堀マモル』として成立する前から、武監督とsetaさんと一緒に、「自分たちで何か作れたらいいね」と話していたんです。はじめは「幽霊が出る話にしよう」とか、それくらいでした。結果として、想像以上に温かいお話になりました。私はこうした心温まるような映画をやるのが初めてだったので(笑)、すごくワクワクしました。
――企画が決まったあとのオファーだったのではなく、作品が出来上がっていく過程から仲間だったんですね。
長編映画として映画館で公開されるまでになって「ええ!」と驚いています(笑)。
――そうだったんですね。もともと作る側にも興味があるのでしょうか。
最初は全然なかったです。よくしていただいているプロデューサーさんやチームから、作っている側の気持ちを聞くことが多くて、興味を持つようになりました。今はまだ具体的に何もありませんけれど、この先、自分でも企画を考えて作れたらいいなとは思っています。
作り手としての山田孝之の話も聞いていた
――近年の作品では『唄う六人の女』への出演も非常に評判を呼びましたが、そこで共演した山田孝之さんも俳優が軸でありながら、作る側の活動をされています。現場でそうしたお話は。
はい。それこそ山田さんやプロデューサーさんがお話しているのを、いつも近くで聞いていて、「こういう風に作っているんだな」と思っていました。
――山田さんは、普段からこれからの映画界についてのお話をされているんですね。
常に何かを変えたいというか、意味があることをしていきたいとお話されています。『マンガ家、堀マモル』も、『唄う六人の女』と同じ伊藤主税プロデューサーが関わっていて、よく知っている方々との現場だったので、安心して撮影に臨めました。
常に自分と向き合い、ポジティブに「変えていくこと」を考える
――演じた春ちゃんへはどんな印象を持ちましたか?
共感できる部分が多かったです。春ちゃんはもともと明るくて、ちょっとうじうじしているマモルを引っ張っていくようなキャラクターです。一見、強いし、しっかりしていますが、いろんな思いもあって、強がっている部分もあって、本音を言えないところもある。そういった一つひとつ、お母さんに本音を言うところなど、春ちゃんの気持ちがよく分かりました。
――お母さんとのシーンは、観ているこちらもつらかったです。
あのシーンは一番きつかったです。お母さんだからこそというか、お母さんの前でだけは、子どもになってポロっと出ちゃう。そこまでつらくはないくらいの顔をしなくちゃと思いながらも。心配させて相手が悲しくなってしまうなら、自分が悲しさを抱えたままのほうがいいと思ってるんですよね。相手が悲しむのは一番イヤだから。でも人間だから、お母さんの前では少し出ちゃう。あそこが一番共感できました。
――本作ではマモルが自分と向き合っていきます。桃果さんは本音を隠しがちとのことですが、何かうまくいかないことがあって、自分自身とじっくり向き合うといったことは。
常にそうです。向き合わなきゃいけない状況になることも多いですが、それを周りのせいにするのではなく、自分をどう変えていったらいいのか。自分を責めるのではなくて、ただ自分の中になにかしらうまくいかない原因もあると思うから、ポジティブに「変えていくこと」を考えたりします。人間関係も、仕事も、常に自分と向き合うように心掛けています。