全日本テレビ番組製作社連盟が主催する「ATP賞」の40周年を記念した「若手クリエイターズフォーラム」が8日、都内のホテルで行われ、ドラマ、ドキュメンタリー、バラエティでそれぞれ活躍する若手制作者たちが、配信や海外展開といったテレビの現状や、コロナ禍を経ての変化などについて語り合った。
『ふてほど』で初プロデューサー、『音が出たら負け』が海外賞
登壇したのは、18年にTBSスパークルに入社し、『中学生日記』『私の家政夫ナギサさん』などの助監督を経て、『不適切にもほどがある!』でプロデューサーデビューした天宮沙恵子氏。来年冬には、自身初のオリジナル企画でチーフプロデューサーを担当予定だ。
14年にテムジンに入社した柳田香帆氏は、伝統工芸・多文化共生・地方移住など日本各地を舞台にしたドキュメンタリーを中心に制作し、『いいいじゅー!!』(NHK)などのレギュラー番組の立ち上げも担当。『渡辺直美のナオミーツ』(NHK)で、第57回ギャラクシー賞奨励賞を共同受賞した。
11年に日テレ アックスオンに入社した野中翔太氏は、挑戦者たちが無音のエリアへ潜入し、音を出さずに難関ゲームのクリアを目指すゲームバラエティ番組『音が出たら負け』(英題『Mute it!』)が国内外で評価され、「ContentAsia Awards 2020」のテレビフォーマット(バラエティ)部門最優秀賞を受賞。
14年にNHKエンタープライズに入社した丸山梓氏は、海外からのドキュメンタリー購入業務などを経て、『ようこそ認知症世界へ』『ウィッシュツリー』など、NHKワールド向けの取材やノンフィクションの番組開発を担当。今年、『ミラドール 絶景を聴く』でフランス「Sunny Side of the Doc」に選出された。
チーム戦で作るコンテンツの強さ
配信コンテンツの台頭で曲がり角を迎えていると言われているテレビだが、柳田氏は「役割はより明確になった」と実感。「“この種類のメダカの飼い方”をテレビでは流せないですが、“みんなが知らないこんな社会問題が今ある”ということを、大きなメディアとして出せる。それに、YouTubeは一人で撮って編集して出す強さ・速さがあると思いますが、情報の正確性や、誰かを傷つけていないか、など大人数で議論しながら作るので、チーム戦で作るコンテンツとしての役割は(ネットに)取られてないのかなと思います」と見ている。
野中氏は、制作会社の立場として「テレビ以外の出しどころがめちゃくちゃ増えて、しかも世界との距離が近づいたので、“テレビ離れ”と言われる中でも、“僕たちは頑張ります”という現場の雰囲気があります」とした上で、「結局サブスク系のコンテンツを作ってるのはテレビの人たちなので、テレビで培ったノウハウがそっちに行ってるし、もしかしたらそのノウハウがテレビに返ってくるかもしれないので、世間が言うほど(テレビと配信)で二分化される必要ってあったんだっけ?と思いながら働いています」と、ありがちな論調に対して懐疑的に語った。
“二分化”を否定する象徴的なツールが、見逃し配信を行うTVerやNHKプラスだ。野中氏は「視聴率が落ちているといいますが、単純計算はできないですけど、視聴率とTVer再生数などを合わせると、意外と見てくれているなという感じで受け止められています。作ってる人たちはTVerとかがあることによって、“本放送ダメだったけど、再生頑張ろうね”ということもあるので、モチベーションにもなっています」と紹介。さらに、「若手はTVer専用の別コンテンツをディレクターとして作れることもあるので、僕らにとって総じて悪いことはないです」と前向きに捉える。
天宮氏は「もはや視聴率と同じぐらい、配信がどれぐらい見られるというのを、制作陣は気にしていると思ってます。『不適切にもほどがある!』では、3話ぐらいでTVerとNetflixの配信がガン!っと回ったんです。口コミとかSNS上で面白そうと思ってくれた若い方とかがすごく見てくれたというのが数字として表れていて、そうすると結果的に4話以降の視聴率が上がるということも実際にあったので、(配信と放送を)全然切り離して考えていないですね」と明かした。