――2007年に女優デビューされてから17年経ち、国内外で活躍されていますが、今の役者業に対する思いをお聞かせください。

ここ数年は日々変化があるくらい、私の人生の中でも特に変化の多い時期だと感じています。以前は「役者業は仕事」という感覚が強かったですが、最近は「芝居が人生」と思うようになり、プライベートで経験したことが芝居に密接に影響しているという感覚がすごく強いです。今は仕事という捉え方をしていなくて、自分の人生の経験の一部という感覚です。

――何か変わるきっかけがあったのでしょうか。

自分と向き合う時間が長くなっていったのかなと。去年、30代に入ってから考え方が変わってきた気がします。芝居を人生と捉えるようになって、今すごくいい状態でいられているので、これからが楽しみです。

――『デッドプール&ウルヴァリン』の現場で、『デッドプール2』の時と比べてご自身の変化を感じることはありましたか?

『デッドプール2』の時は、緊張したというより圧倒されていました。今までの現場と勝手が違い、セキュリティー面もそうですし、ライアン・レイノルズを目の前にすると存在感があり、ウェイドというエネルギーの強い役を目撃して圧倒され、そのまま終わった感じがあって。でも今回は、いろんな経験を経て戻ってきて、素の自分としてリラックスして現場にいられた感じがあり、それは大きな違いでした。

――アメリカの仕事に軸を置いてからの変化も改めてお聞かせください。

生活面での変化があまりにも大きくて、長期の撮影を経験すればするほど、タフになってきたなと感じています。アメリカの仕事に軸を置いているといっても、ハリウッド作品は毎回撮影する国が違って、その都度、全然違う国、文化、環境の中で生活をしていく感じで、毎年新しい場所で新しい学びがあります。

――14歳までオーストラリアのシドニーで住んでいた忽那さんでも、相当なチャレンジなわけですね。

海外に住んでいたと言っても、家族と住んでいたので。さすがに1人で半年以上海外にいなくてはいけないというのは嫌ですね(笑)。もともと一人旅もしないタイプだったので、半強制的に違う国で長期間生活しなければいけないというのは、人としてチャレンジングな分、自分と向き合いますし、そういう意味で成長はすごくあると思います。

――人としても役者としても成長を感じられそうですね。

一流のスタッフさんと仕事ができるというのは、とても恵まれているなと感じています。自分自身のパフォーマンスも変わりますし、みんなで異国で長期間撮影に挑んでいるからこそ、気持ちの面でも違うというか、すごく濃厚な現場を経験できているなと思います。そして、現場だけでなく人生としていろんなことを経験できていて、それが芝居の成長にもつながっていると思います。

「日本人であることを前面に出して活動していけたら」

――逆に、海外に出たことで気づいた日本の良さはありますか?

ここ数年海外に出ている中で自分に起こった一番大きな変化は、日本人としての自分、日本人としての誇りがすごく強くなりました。以前は正直そういうものはなかったのですが、外国の文化にはない繊細さなど、日本ならではの魅力を感じるようになり、海外の現場に入ると、そこを前面に出してアピールするようになりました。

――今後の活動はどのように思い描いていますか?

今自分がこういうことを伝えたい、こういう作品に出会いたいと思うものを確実にやれるように、引き寄せていけたらいいなと思います。私たち役者は、自発的に企画を立ち上げない限りは、オーディションを受けて、巡り合わせで作品につながっていくので、なかなか自分の思い通りに行かないと思いがちですが、ちゃんとアンテナを張っていたら、自分がその時にやるべきものに巡り合えると思うので、そうなっていくようにやっていけたら思います。

――そして、日本人としての誇りを胸に、日本の良さを発信していきたいという思いが、これからの一つ大きな原動力になっていくのでしょうか。

そうですね。そこが一番の自分の特徴というか、ほかの海外の役者さんとは違う自分らしさだと思っているので、これからも日本人として誇りを大切に、日本人であることを前面に出して活動していけたらと思います。

■忽那汐里
1992年12月22日生まれ、オーストラリア出身。2006年、「第11回全日本国民的美少女コンテスト」で審査員特別賞を受賞。2007年、TBS系ドラマ『3年B組金八先生』の第8シリーズで女優デビューを果たした。その後、日本テレビ系ドラマ『家政婦のミタ』(2011年)などで注目を浴び、数々のドラマや映画に出演。2018年よりハリウッドに本格進出し、ユキオ役を演じた映画『デッドプール2』(18)が話題に。そのほか、近年の主な出演作は、映画『オー・ルーシー!』(18)、Netflix『アウトサイダー』(18)、『マーダー・ミステリー』(19)、『サンクチュアリ -聖域-』(23)など。

(C)2024 20th Century Studios / (C)and 2024 MARVEL.